眼の外傷

   

眼に外傷を受けたときに,一般に注意しなければならないこと

医師は外傷の様子を詳細に聞かなければなりません。 次のようなことがらに十分注意して,必ず記録しておきましょう。

1.外傷の時間,場所(授業中,休み時間,放課後,校内か校外か)。

2.外傷を誰が見ていたか,加害者は誰か。

3.外傷の原因となったものは何か。

4・外傷の原因となったものが,どの方向から,どれくらいの距離から飛んできたか。

5.外傷の原因となった物体が不潔であったかどうか。

6.メガネをかけていたか,破・損していたかどうか。

7.急激な視力低下があったかどうか,視力低下は時間を経るにつれて進行したかどうか。

8.両眼か片眼か。

9.外傷を受けていない方の眼の視力に異常がないかどうか。

10.既応症として,眼疾患があったかどうか。外傷前の視力はどうであったか。弱視があったかどうか。

 

眼の外傷による病名の見分け方

眼の打撲は何があたったか,どんな状態で,どこにあたったかによって病気の程度はさまざまです。

図に示すように,眼球外や眼球内の部位により,障害の病名や症状の程度はさまざまです。一般に眼球内部の障害ほど重症といえるでしょう。

眼の外傷では,症状的には軽症であっても,眼球内部に異常のある場合が多いため,外見上にまどわされず,やはり眼科医に受診しておくようにすすめるべきでしょう。

 

目の外傷図

 

点線−正常な眼球

実線−外傷を受けそこなったときに起こった眼球のひずみと、そこに起こった障害

番号−下表の病名、症状の説明での番号。

 

眼の外傷一覧表

No

病名及び異常

外傷の部位

症状

視診

病状の程度(軽傷・中症・重症)

予後及び指導

1

まぶたの腫れ

まぶた

まぶたの軟部の打撲のみ

一時的な痛み

腫れているのが見える

軽傷

良。1週間前後で治癒。

2

まぶたの皮下出血

まぶた

まぶたの皮下血管の損傷

目のまわりが黒ずみ腫れているのが見える

軽傷

良。1週間前後で治癒。

3

まぶたの切創(裂傷)

まぶた

出血

切創が見える

程度に差あり

良。2週間程度で治癒。複雑な裂傷は眼瞼瘢痕を残し治癒期間も長い。

4

球結膜下出血

結膜

白目の出血斑

見える

軽傷

良。2週間前後で治癒。

5

角膜上皮剥離

角膜穿孔外傷

角膜

痛み・流涙・視力障害

目が開けられない

よく見ると見える

程度に差あり

時として視力障害を残す。2週間前後で治癒。場合によりコンタクトレンズ処方、角膜移植術。ただし角膜穿孔の場合は、場合により予後不良。

6

外傷性散瞳

虹彩

ひとみが拡大している。前房出血を伴うことが多い

見える場合と見えない場合あり

程度に差あり

時として視力障害、眩しさを残す。続発性緑内障を起こす事がある。2週間前後で治癒。虹彩付きコンタクトレンズ

7

前房出血

前房

虹彩

毛様体

前房の下方に血液がたまっている

見える場合と見えない場合あり

程度に差あり

再出血しなければ良。3週間前後で治癒。ただし再出血すれば視力障害を残すことあり。

8

外傷性虹彩炎

虹彩

痛み・視力障害・眩しさ・前房出血を伴う

見えない

程度に差あり

再出血しなければ良。3週間前後で消失。

9

虹彩離断

虹彩

痛み・視力障害・前房出血を伴う

見えない

程度に差あり

再出血しなければ良。後遺症あり

10

水晶体亜脱臼

水晶体

複視

見えない

程度に差あり

場合により手術を必要とする。後遺症あり。

11

外傷性白内障

水晶体

視力障害

ひとみが白く濁る

時として見える

程度に差あり

重症の場合は不良。緊急手術を必要とする。後遺症あり。視力障害を残す。

12

眼窩吹きぬけ骨折

眼窩

複視

眼球運動障害

見えない

中症・重症

不良。緊急手術を必要とする。後遺症の越す事多し。複視・眼球障害を残す

13

視神経管骨折

視神経管

高度視力障害

見えない

重症

不良。緊急手術を必要とする。視力障害を残す。

14

硝子体出血

硝子体

高度視力障害

見えない

重症

絶対安静を必要とする。緊急手術を必要とする。後遺症残す事多し。長期間かかる。視力障害を残す。

15

網膜剥離

網膜

視力障害および視野欠損

見えない

重症

絶対安静。緊急手術を必要とする。後遺症残すこと多し。視力障害、視野欠損を残す。

16

網膜振盪症

網膜

視野障害

時として中心暗点

見えない

軽症

良。1〜2週間で治癒。

17

脈絡膜出血

網膜出血

網膜

脈絡膜

視力障害

赤く見える

見えない

程度に差あり

絶対安静を必要とする。2〜3カ月後遺症残すこと多し。視力障害を残す。

18

眼球破裂

眼球

高度視力障害

失明となりやすい

見える

重症

不良。場合により眼球摘出を必要とする。重大な後遺症あり。

19

続発性緑内障

前房隅角

視力障害

視野欠損

見えない

重症

不良。場合により手術を必要とする。重大な後遺症あり。

 

            

前のページに戻る          次のページへ