8.見え方がおかしい

 
症状
原因
 
視力障害

徐々に見えにくくなった

屈折異常、老視、白内障、眼底疾患など

急に見にくくなった

網膜中心動脈閉塞症、視神経炎、硝子体出血、突発性ブドウ膜炎、網膜剥離など

視野異常

狭窄

網膜・視神経・脳疾患、緑内障、ヒステリー

半盲

視路疾患など

暗点

網膜黄斑疾患(中心性網脈絡膜炎など)うっ血乳頭など

複視(二つに見える)

両眼複視

眼筋麻痺など

片眼複視

乱視、白内障、虹彩離断、水晶体亜脱臼など

飛蚊症

黒い小さな物が見える

硝子体混濁、ブドウ膜炎、硝子体出血など

光視症

閃光やキラキラしたものが見える

網膜剥離、脳の循環障害など

変視症

ゆがんで見える

中心性網脈絡膜炎、網膜剥離など

小視症

小さく見える

調節麻痺、中心性網膜炎など

大視症

大きく見える

調節けいれんなど

虹視症

電灯の周りに虹が見える

緑内障、角膜疾患など

色視症

色がついて見える

無水晶体症、薬物中毒など

夜盲症

暗いところで見にくい

網膜色素変性症、高度近視、ビタミンA欠乏など

10
昼盲

明るいところで見にくい

白内障、角膜混濁、全色盲、白子症など

視力障害


狭窄

 

半盲

飛蚊症

 

光視症
変視症

小視症

 

大視症
虹視症
色視症
夜盲症
昼盲

 

 (1).視力障害

1)徐々に見にくくなってきた

「最近,視力が低下してきた」といったように,徐々に視力が低下してきた場合,最も多いのは屈折異常(近視,遠視,乱視)による場合です。 軽度の屈折異常は,若いうちは視力に現われないこともあり,気付かないのですが,調節力の低下する年齢になってはじめて視力にも現われてくるということはよくあります。視力はよいと思っていたのに,実は老視だった,というわけです。40歳以上の年齢で近くが見にくい場合は老視がほとんどです。遠視の人では,より若い年齢でもなってきます。老眼は病気ではありません。程度の差はあるにしても,誰もがなる身体の老化現象のひとつですから心配することはありません。無理をすると眼精疲労を起こしてさますから,自分にあった度の老眼鏡をかけるのがよいでしょう。その他,徐々に視力が低下する原因となる病気はかなり多く,角膜,前房,瞳孔,虹彩,水晶体,硝子体,脈絡膜,網膜,視神経などの病気があれば,視力に障害が出てきます。このうち,他にこれといった症状がなく,だんだん見にく くなってくるものに白内障があります。

白内障(cataract)

 

水晶体が濁ってくることを白内障といいます。瞳孔をみると白く見えることから「白そこひ」ともよばれます。目の中のレンズの役目をしている水晶体に濁りが生じると,光を十分に通さなくなり,ちょうどスリガラスを通して外を見るように物がかすんで見えるようになります。そして濁りがきつくなると明暗だけしかわからなくなるなど視力は低下します。白内障にはいろいろな種類があります。

先天性白内障

 

生まれつき水晶体に混濁のあるもので,他の先天異常(小眼球,斜視,ブドウ膜欠損,眼球振盪など)を伴っていることが多くみられます。混濁は一般に停止性ですが,進行性で混濁が広がるものもあります。混濁の程度にもよりますが,視力に大きな影響を及ぼしている場合は、なるべく早い時期に手術する必要があります。というのは,6歳を過ぎますと視機能が完成されていますので,それから手術をしてもよい視力が得られないことが多いからです。いわゆる弱視になってしまっているおそれがあるのです。

     

2−1 老人性白内障

 

最も多くみられる白内障で,通常45歳以後に起こってきます。これは,年をとって水晶体の栄養が悪くなって混濁がでてくるもので,老化現象のひとつとも考えられています。おこり方にはいくつか型があり,最もよくみられるのは,水晶体の周りの部分から濁りが始まるものです。この場合,瞳孔領は透明ですから何の自覚症状もなく,眼底検査などで散瞳した際にたまたま見つけられたということがよくあります。そして,それが徐々に進行してくると,瞳孔の中央部分まで濁ってくるので,視力が悪くなってきます。別の型では,水晶体の中央部から滴りの始まるものがあります。この場合は,はじめから視力は悪くなってきます。

     

2−2 糖尿病性白内障

 

糖尿病が原因となって水晶体に濁りのでてくるもので,比較的若い年齢でも起こってきます。また,進み方も早いようです。

     

2−3 併発性白内障

 

目の病気が原因となって起こる白内障で,たとえばブドウ膜炎,網膜剥離,網膜色素変性症など,併発白内障を引き起こす病気は多くあります。

     

2−4 外傷性白内障

 

外傷によって白内障が起こってくるもので,水晶体に傷ができてそこから混濁が広がっていきます。

白内障の治療

 

現在のところ,点眼薬や内服薬で水晶体の混濁を確実に治してしまうものはありません。したがって白内障の治療は,混濁がそれ以上進行しないようにすることが主になっています。老人性白内障では,その進行は個人差があり,数年あるいは10年以上も進行しない人があるかと思えば2〜3年で見えなくなってしまう人もあります。同じように,白内障用の点眼寮や内服薬,または漢方薬などで,進行が止まる人があるかと思うと,それほど効果のない人もあります。そういった点ではかかった本人にとって,不安な病気かもしれません。しかし,目も身体の一部です。身体が健康であれば,白内障の進行もある程度押さえることができます。目の疲労を避けるだけでなく,新鮮な野菜や果物などバランスのとれた食生活をし,全身の健康状態をよく保つことが大切でしょう。

     

白内障の手術

 

水晶体の混濁が進行し,視力障害を引き起こしてきたら,最終的には手術をして滞った水晶体を取り除きます。昔は,明暗がわからなくなるまで待って手術をしていましたが,最近では,手術法のめざましい発達によって,本人が見えにくく不自由だと思った時点で手術は可能です。手術時期は,その人の年齢や職業,白内障の原因,全身状態によって違ってきますから一概にはいえません。現役で働いている人と御隠居さんでは,日常生活に必要な視力も異なります。また,あまり長期間放置すると,緑内障やブドウ膜炎などを起こすことがあり,そうなると手術後の視力も期待できなくなってしまいます。結局,手術時期は日常生活に不自由を感じ始めたときで,医学的に遅すぎないうち(時),ということになるでしょう。手術の方法には,大きく分けて,水晶体を水晶体嚢(袋)ごとすべて取り出す嚢内摘出術(全摘出術)と袋を破って水晶体の中身だけを取り出す嚢外摘出術の二つの方法があります。また最近では,超音波を利用して水晶体を砕いてから吸い出す方法も行なわれています。いずれも,白内障の種類や年齢など,その場合によって方法が異なるだけで,基本的に濁った水晶体を摘出することに変わりはありません。

*最近は特殊な例を除いて、ほとんどの症例で超音波乳化吸引術により手術をおこなうことができるようになってきました。以前より安全に短時間で手術ができるようになり、創口が小さくできるため、術後の回復もかなり早くなっています。(参考:→白内障と眼内レンズ手術

     

無水晶体症(白内障術後)

 

白内障の手術を行ない,水晶体を取り去ってしまった状態を無水晶体症といいます。まれに外傷などで水晶体がはずれてしまうこともあり,これも無水晶体症といいます。 水晶体は目の中でレンズの役目をしていたものですから,それを取り除いてしまうとその分だけ目の屈折力が足りなくなります。そのため,白内障の手術で水晶体をとりのぞいただけであると、それを補う眼鏡かコンタクトレンズを装用しなければなりません。また,その度はその人がもともと遠視であったか近視であったかによっても違ってきますが,+11D〜+13Dくらいのかなりの度の強い凸レンズが必要になります。ですから,眼鏡では物が大きく見えたり,視野が限られるなど慣れるまで時間がかかるようです。その点コンタクトレンズではそのようなことがないため,装用に問題がなければ視力矯正の点ではすぐれているでしょう。また片眼だけの無水晶体症では,眼鏡では不同視が起こつてきますから,コンタクトレンズで矯正することになります。

*現在は水晶体をとったあとに眼内レンズ(人工水晶体)を挿入することが一般的になっています。そのため、無水晶体眼のように「分厚い眼鏡」や「コンタクトレンズ」の装用は不要になりました。ただし、眼内レンズには調節力がないため(=老眼の進んだ状態と同じでピントのあう距離の範囲が狭い)眼内レンズを挿入した場合でも、より良い視力を得るためには、それぞれの生活環境にあわせた眼鏡を併用するとよいわけです。(参考:→白内障と眼内レンズ手術

人工水晶体(眼内レンズ)

白内障の手術後は度の強い眼鏡を装用したり,コンタクトレンズを装用しなくてはならないため,取り去った水晶体の代わりにほぼ同じ位置に小さな眼内レンズ(人工水晶体)を移植する方法があります。平成4年4月以降、眼内レンズも保険適応となり、広く一般的に使用されるようになりました。現在は眼内レンズの安全性が評価され、特殊な症例を除いて白内障手術のほとんどすべてが眼内レンズを挿入する手術になっています。最近は日本だけでも年間数十万件以上の眼内レンズ手術がおこなわれています。(参考:→白内障と眼内レンズ手術)

2)急に見にくくなった(見えなくなった)

急激に視力が低下した場合,眼底,視神経や脳などの病変が原因となっていることが多く,早期に適切な治療を施さないと高度の視力障害を残したり,失明に至ることも少なくありません。危険な状態といえるでしょう。

網膜中心動脈閉塞症(obstruction of retinal central artery)

 

網膜に栄養を与えている動脈がつまって,網膜に栄養がいかなくなるため,急に見えなくなってしまいます。30分以上この状態が続くと網膜の機能は回復せず,失明に至ります。 ですからできるだけ早く血管を拡げる治療をする必要があります。動脈硬化症,心臓病など循環器障害のある場合に起こりやすいようです。また一時的に血管が締まり,一過性の失明で終わることもありますが,動脈がつまる前兆とも考えられるので十分な注意が必要でしょう。

     

視神経炎(opticneuritis)

 

視神経炎は,眼底検査で視神経の腫れがわかる乳頭炎と,腫れのわからない球後視神経炎とに分類されますが,いずれにしても,視力が障害され,ときには失明に至ることもあります。原因は,脳や脊髄のいろいろな疾患,隣接組織の炎症,アルコール,シンナーなどの中毒など多くのものがあります。治療は,原因に対する治療が主になります。

     

硝子体出血(haemorrhagia crporis vitrei)

 

網膜血管からの出血が硝子体内に出てきたもので,はじめに赤いものが見えた後,急に視力が低下してきます。外傷や糖尿病などによる網膜出血が原因で,徐々に出血は吸収され硝子体混濁の状態になりますが,出血が反復すると吸収が悪くなり,網膜剥離や緑内障を合併することもあり,予後不良となります。

     

特発性ブドウ膜炎(uveitis idiopathica)

 

青年から壮年者に多くみられ,両眼同時に急に起こってきます。めまい,嘔吐,頭痛,耳鳴などの症状もあり,1〜2カ月すると頭髪やまゆ毛が白くなることもあります。前部ブドウ膜炎の強いものを「フォークト・小柳病」,後部ブドウ膜炎の強いものを「原田病」といいます。原因はウイルス感染によると推定されています。前眼部をおかす「フォークト・小柳病」は予後悪く,失明することもありますが,後眼部をおかす「原田病」は比較的予後は良好です。

その他に網膜出血がひどい場合網膜剥離が広範囲におきた場合急性緑内障などでも急激な視力低下がみられます。


          

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