

私が初めて研修医の時に執刀した白内障手術は、眼球の後ろに麻酔の注射をし、白目と黒目の境目を約9mm切り、濁った水晶体を摘出し、眼内レンズをいれたあと6糸程度縫合していました。手術時間は1時間近くかかり、経験を積んだ後でも30分程度かかっていました。術後の炎症は強く、切開創が長いために乱視がでて、視力が安定するまで1カ月程度要したものです。術後の眼鏡処方も3カ月先・・・と随分ご不便をかけたと思います。
その頃から比べると技術は格段に進歩しました。麻酔は点眼のみで注射はありません。超音波で白内障を粉砕して同時に吸引します。眼内レンズは折りたたみ式にて挿入するので、切開は3mmのみです。縫合する必要はありません。手術時間も10分程度で終わります。執刀する私にも手術を受けられる患者さまにも、ストレスの少ない手術になりました。
私は数年前に実母の白内障手術を行いました。執刀前は少し緊張しましたが、いざ始まればいつものテンポで落ち着いて行えたと思います。母も「ちっとも痛くなかったよ。玲ちゃん、上手だね!」と言ってくれました。執刀することを通じて良かった思う点は、家族の立場を経験できたことです。ゆっくり安静してもらうために食事の準備をし、時間がくれば点眼をし、洗髪を手伝いました。母は60歳代でまだ若く全て自分で行えたはずですが、恐らくこの機会に・・・と思いっきり甘えてくれたのでしょう。
ほんの10分程度で終わる手術も、家族にとっては一大事。簡単に手術を勧めるのではなく、家族の背景も考えて手術のお話をしています。そして執刀するときは、母を執刀した時の気持ちを思い出します。私の家族だったら・・・という気持ちで手術に挑むようになれたのも、私にすべてを託してくれた母のおかげで、いい経験をさせてもらいました。
もし白内障手術でお悩みでしたら、どうぞ相談にお越しください。何らかのアドバイスはできるかと思います。
2008年6月 レイ眼科クリニック院長 松本 玲