5.かゆみ

病名
症状
原因
(その他)

かゆみ

アレルギー性結膜炎

痛痒感、球結膜浮腫、充血、濾胞形成

花粉、薬品、動物の毛など

春季カタル

痛痒感、まぶしさ、充血、乳頭増殖

不明(花粉等)

10〜20歳前後の男子に好発

毎年繰り返す

目がかゆいという症状は一般的な結膜炎でも起こってきますし,麦粒瞳の初期にも起こります。まぶたのふちがかゆい場合は眼瞼縁炎が考えられます。しかし,普通目がかゆいと感じた場合はアレルギー性結膜炎を疑います。

 

アレルギー性結膜炎(conjunctivitis allergica) 

かゆみが強く,球結膜がふくれあがっていたり,まぶたの裏の結膜にぶつぶつ(濾胞)がみられます。スギ,マツ,カモガヤなどの花粉,空気中のゴミ,動物の毛,化粧品,薬品,食べ物などによるアレルギーによるもので,アレルギー体質のある人に起こりやすいようです。また,暖かい場所,各植物の花粉の飛ぶ季節,晴れた日に好発するようです。治療は,副腎皮質ホルモンおよびインタールの点眼で容易に治りますから問題はありませんが,アレルギーを起こす原因(抗原−アレルゲン)を除去したり,遠ざけるようにしないと,何度もくり返し再発します。抗原に対する免疫をつくる治療(脱感作療法)や,体質改善をする治療を行なうこともあります。自分が何に対して過敏であるのかを知っておくことが大切でしょう。また,薬品に対するアレルギーのある人は,その薬を使わないようにしなければなりません。その薬を注射することによってアレルギー反応を起こしショック死に至ることがあるからです。春季カタルやフリクテン性結膜炎は,このアレルギー性結膜炎の一種です。

 

春季カタル(spring catarrh)

かゆみが非常に強く,症状により眼瞼型と限球型の二つに分けられています。眼険型は,まぶたの裏の結膜が牛乳のような色に濁り,石垣をならべたようなぶつぶつ(乳頭増殖)がみられます。眼球型は,球結膜に部分的な充血がみられ,その部分が盛り上がって,全体に黄色味をおびた汚ない色になります。春から軟にかけて症状が悪化し,冬にはおさまり,また春になると症状が悪化するということを例年くり返します。10〜20歳の男子に多く,20歳前後で自然に治ってしまいます。治療は,アレルギー性結膜炎と同じで,副腎皮質ホルモンの点眼や結膜への注射がよく効きます。点眼をしている間は症状がおさまっていますが,点眼を止めると悪化するという悪循環をくり返すことが多いようです。ただし,副腎皮質ホルモンの点眼は緑内障の素質のある人では眼圧が上がって緑内障を起こす危険があるので,長期にわたる点眼は医師の指示に従ってください。根本的には,アレルギー体質を改善する治療が行なわれます。アレルギー性結膜炎と同様,花粉などが原因と考えられますから,症状を少しでも悪化させないように,天気のよい日に長時間外出しないなどの防衛策をとることも大切です。

花粉症一

 

 

 

目の症状としては

1.白目が赤くなる

2.涙が出る

3.目がゴロゴロする

4.まぶしい

花粉症

1.症状

春先や季節の変わり目になると図のような症状に悩まされます。

2.発症の仕組みと原因となるもの

眼に入った異物の中に含まれる,ある特定の物質に対して過敏に反応することを“アレルギー”といい,このときの原因となるものを“アレルゲン (抗原)”とよんでいます。アレルゲンは誰に対してもアレルギーを起こさせるわけではなく,遺伝的にアレルギーを持つ人がアレルゲンに接していると,その体内に“抗体”という特殊なたん白質が作られます。このアレルゲンと抗体が結合することを,“抗原抗体反応”といい,このとき,生体の細胞から放出されるヒスタミンという化学物質が眼に作用したものが,アレルギー性結膜炎です。また,鼻や気管支に作用すればそれぞれアレルギー性鼻炎や気管支ぜんそくが発症します。この抗原抗体反応が,人により体内で抗体を産生すると反応がにぶくなり,やがて免疫ができてしまいます。もし,体内に入ってきた異物に対して全く免疫がなければ,その異物はわがもの顔に体を犯してしまうでしょう。

アレルギー性結膜炎を分類すると次のようになります。

○すぐに反応する型(沍^過敏症)

 ・花粉症一スギ,ヨモギ,カモガヤ,ブタクサ

 ・急性あるいは慢性アレルギー性結膜炎

○ゆっくり反応する型(「型過敏症)

 ・春季カタル

 ・接触性眼瞼結膜炎

○その他の型として

 ・フリクテン性結膜炎

 ・ハウスダスト(家のホコリ)

 ・ダニ

 ・真菌

 ・獣毛

 ・化粧品・食品

等を抗原とする結膜炎

 

6.異物感

  

病名
症状
原因
(その他)

ゴロゴロした感じ

結膜結石

異物感

結膜に石灰分が沈着

ビマン性表層角膜炎

異物感、まぶしさ、流涙、視力障害

眼瞼内反症、ビタミンB2欠乏など

角膜真菌症

異物感、まぶしさ、疼痛、流涙、視力障害

真菌

抗生物質の目薬の長期使用により誘発

角膜ヘルペス

異物感、疼痛、まぶしさ、流涙、視力障害、毛様充血

単純ヘルペスウィルス、帯状ヘルペスウィルス

眼瞼ヘルペスを伴う、再発しやすい

目に何かが入っているようなゴロゴロした感じを異物感といいます。文字通り異物(ゴミなど)が入っている場合が多いのですが,何も入っていないのに異物感があるのは角膜に傷がついていたり,角膜の病気であることがほとんどです。眼瞼内反症,睫毛乱生症などが原因になっていることも多く,結膜炎でも異物感のあることがあります。

結膜結石(lithiasis conjunctivae)

まぶたの裏に小さな石ができる病気で,これは結膜上皮のくぼみなどに上皮細胞のこわれたものなどがたまり,石灰の沈着したもので,症状がなければ放置してもかまいません。まばたきをするとコロコロするようであれば,取り除いてもらえばすぐに治ります。これと似た病気に,マイボーム腺硬塞というのがあります。マイボーム腺の出口に分泌物がたまり異物感を起こしてきます。これも除去によりかんたんに治ります。

 

ビマン性表層角膜炎(keratitis superficialis diffusa)

角膜の表面に非常に小さな傷がたくさんできたもので,灰をまいたような細かい濁りがみられます。これらは,細隙灯顕微鏡で見てはじめてわかるもので,普通に見たのではわかりません。自覚的には,異物感のほかにまぶしさがあり,涙の出ることもあります。また,見にくくなったり,目が疲れたりすることもあります。原因は,目をこすったりまつ毛があたったり,ビタミンB2の不足などいろいろあります。内反症の人はかかりやすいといえます。治療としては,原因に対する治療と併せてビタミンB2の点眼などを使用します。治れば,視力は元に戻ります。

 

角膜真菌症(keratomycosis)

真菌による角膜炎は以前はまれな病気でしたが,副腎皮質ホルモンや抗生物質の点眼がさかんに行なわれるようになってから逆に多くなってきました。真菌は広く自然界に生息し,とくに土の中に多く存在しています。病原性を持つことは少ないのですが,副腎皮質ホルモンや抗生物質の長期点眼使用により誘発され角膜に感染します。感染すると,表層性の角膜潰瘍を起こし,徐々に周囲や深部に進行し,匐行性角膜潰瘍と同じような経過をたどります。失明に至ることもある危険な病気です。治療もむずかしく,副腎皮質ホルモンは絶対使用してはなりません。たいした自覚症状もないのに,むやみに目薬を長時間(2〜3週間以上)使用するのは,こういったことからもよくありませんし,危険です。目薬などの使用は,医師の指示通りに従うことが大切です。

 

角膜ヘルペス(herpes corneae)

円板状角膜炎

地図状角膜炎

樹枝状角膜炎

へルペスウイルスによる疾患で,特に単純ヘルペスウイルスによる場合が多くみられます。このヘルペスウイルスは,成人の約80%に不顕性感染(感染はしていても何の症状も現われないもの)させています。初感染をしても,発症するものはその1%に満たないとされています。つまり,99%以上は不顕性感染で終わります。初感染で発症するのは5歳以下の幼児に多く,必ずしも角膜に発症するとは限りません。角膜に発症した場合は,はじめビマン性表層角膜炎のような症状を起こし,ついで樹枝状の浅い潰瘍を生じます。1カ月くらいで角膜に白い濁りを残して治りますが,へルペスウイルスは,口腔粘膜,結膜や角膜の上皮,生殖器,神経組織などに休航状態でとどまります。そして,種々の誘因により活性化され,再発してきます。普通よくみられる角膜へルペスは,不顕性感染にしろ,一度感染したものが,再発したり,再感染したものです。休眠しているへルペスウイルスを活性化させる誘因としては,発熱が最も多く,その他に,光線(紫外線),月経,胃腸障害,外傷,副腎皮質ホルモンの局所投与などがあります。角膜へルペスの最初は樹枝状角膜炎とよばれ,角膜の表層に木の枝のような潰瘍をつくります。ゴロゴロしてまぶしく,涙も出て視力が低下してきます。角膜へルペスは,この時期までに完全に治しておくことが大切です。潰瘍の部分をけずり取ったり,IDUやアシクロビルという抗へルペス剤の点眼で治療したりしますが,再発しやすく,再発をくり返すと病巣が広がり,地図状角膜炎となったり,深部にまで及び円板状角膜炎となったりします。また虹彩毛様体炎も併発し,症状はいっそうひどくなります。こうなると,治っても角膜が濁って不透明となるため,高度の視力傷害を残し,失明することもあります。角膜へルペスはなかなか頑固な病気で治りにくく,いったん治っても再発しやすく,予後不良になりがちな困った病気です。徹底した初期治療に加えてウィルスに打ち勝つ強い身体づくりが重要です。

 

7.目が疲れる

 
症状
症候群
分類
原因

・めがつかれる

・目が痛い

・目がかすむ

・まぶしい

・充血する

・涙が出る

・目が重い

・目を開けていられない

・ぼやける

・二重に見える

・焦点が合わない

・頭が痛い

・頭が重い

・肩がこる

・気分が悪くなる

眼精疲労

調節性眼精疲労

屈折異常

調節異常

筋性眼性疲労

斜位、斜視

輻奏不全

症候性眼精疲労

各眼疾患(緑内障初期、眼窩上神経痛)

全身病(循環器障害、婦人病)

不当像性眼精疲労

不同視など 

神経性眼精疲労

神経衰弱、ヒステリー、全身衰弱

 眼精疲労の年齢別分布 

 

眼精疲労の分類と頻度 

 

目が疲れるといった症状は,ある年齢以上の人であればその程度の差こそあれ,経験したことのあるものだと思います。身体を使い過ぎると疲れるのと同じで,目も使い過ぎれば疲れるのは当然ともいえます。目を使う仕事をするときや物を見ようとするときに,目が疲れやすい,二重に見える,ぼやけてくる,かすんでくる,見ていられなくなるなどの視機能の低下を訴えたりすることがあります。このような目を使う際に起こってくる異和感や苦痛を総じて,眼精疲労といいます。人によって症状の出方はまちまちで,一般的には「疲れ目」とよばれています。

 

眼精度労(asthemopia)

眼精疲労は病気ではなく,「目が疲れる」を代表とするいろいろな症状を総称する症候名です。ですから,十分な問診や検診をしてその原因を突き止めなければなりません。原因は大きく外環境要因と内環境要因に分けることができます。

眼精疲労

外環境要因

内環境要因

生活環境

仕事の質・良

目の状態

全身的状態

 

 

(1)外環境要因

 

その人が生活している環境や仕事の質や量とが原因になることがあります。照明や光線の具合,化学的刺激,粉塵,騒音等の悪い環境に長時間いる場合や精密作業,コンピューター・ワープロ操作などの近くのものを見続ける仕事をしている場合がそれにあたります。特に照明は,目を使う仕事をする環境としては大切です。明るければよい,と考えられがちですが,必ずしもそうではありません。明るすぎると反射する光の量が多くなり,かえって目を疲れさせることになります。

 

(2)内環鏡要因

眼精疲労では,やはり目そのものに異常のある場合が多くみられ,それが外環境要因や全身的な状態とからみ合って起こしている場合がほとんどです。そこで,眼精疲労をの表のように,その原因から調節性,筋性,症候性,不等像性,神経性と分類することもあります。

 

 

屈折異常(近視・遠視・乱視)

原因の多くは遠視と乱視です。また眼鏡が合っていない場合もよくあります。近視では目が疲れることはまずありません。というのは,近視は近くの物を見るのにほとんど調節(ピントを合わせようとする働き)をしなくてもよいからです。だから,近視は近くを見るのに適した目といえます。逆に遠視は近くを見るのには適さない目といえます。近くの物を見るのに常に調節を働かせていないとよく見えないからです。そこで,遠視の人が長時間近くの物を見続けると眼精疲労を訴えるようになるのです。乱視があっても,同じく無理に調節して見ないとはっきり見えないので,やはり目が疲れてきます。屈折異常があれば,眼鏡かコンタクトレンズを装用することで目の疲れは軽くなります。もちろん,その眼鏡やコンタクトレンズでは,その人に合ったものでなければなりません。近視の人でも,合っていない眼鏡をかけていれば当然目が疲れます。しかし,近視や乱視の度が強い場合は,度に合った眼鏡を装用すると,見えているものが小さく見えたり,ゆがんで見えたりして,かえって眼精疲労を起こすことがあります。その場合は,適当に度を弱めることもあります。

 

調節異常(老視,調節麻痺,調節衰弱,調節けいれん)

ピントを合わせようとする目の働きがうまくいかないために目が疲れてきます。その代表的なものは老視(屈折異常編P55)です。老視は病気ではなく,ある年齢になればだれでもなる状態です。また,年齢とともに進行しますから,それに応じた度の老眼鏡をかけていくことが必要です。老視以外にも,調節麻痺,調節衰弱,調節けいれんなど,調節をつかさどる毛様体筋がうまく働かなくなることがあります。これらは薬物中毒,全身衰弱,神経衰弱,ヒステリー,外傷などが原因で起こってきます。

 

不同視

両眼の屈折の程度が異なるものを不同視といいます。たとえば,片眼だけが近視が強いとか,片眠が遠視で片眼が近視というような場合,片眼だけ白内障の手術をした後もこの状態になります。両眼屈折カの差が2D(ジオプトリー)以内であれば眼鏡で両眼の視力を同じように矯正できますが,2D以上であると,眼鏡で両眼の視力を同じように矯正すると左右で見える物の大きさが違ってくるため(不等像視)かえって目の疲れが出てきます。このような場合は,コンタクトレンズで矯正すると不等像視は現われません。

 

斜視(間歇性斜視,斜位)

斜視(屈折異常編P87)でも間歇性斜視(斜視のときと,斜視でないときがある)や斜位(眼位ずれはあるが,それを眼筋を働かせて自ら矯正している)の人は,眼精疲労が起こってきます。視線をまっすぐにして,斜視をなくし,ものをひとつにみようと常に目の筋肉を緊張させるために疲れるわけです。プリズム眼鏡をかけたり,斜視手術をするなどの方法で治します。

 

輻輳不全

近くのものを見ると目が内に寄ってきます。いわゆる「より目」の状態になります。この目を内によせることを輻輳といいます。この運動がうまくいかないと,やはり目が疲れます。いわゆる,むち打ち症や脳の病変などが原因となります。

 

目の病気

結膜炎や角膜炎があっても眼精疲労症状を訴えることがあります。また緑内障の初期にも目が疲れるといった症状が現われます。眼精疲労で眼科へ行くと,眼圧や視野の検査をする場合がありますが,緑内障が原因になっていることもあるからです。これらの場合,それぞれの病気に応じた治療をしていきます。

 

全身的状態

眼精疲労は,その人の全身状態にかなりの原因があることが少なくありません。病気などで体力の弱っているとき,栄養状態の悪いとき,睡眠不足のときなども目が疲れます。全身病としては,循環器障害,消化器障害,腎機能障害,自律神経失調症,婦人病などが原因となったり,低血圧症,副鼻腔炎(蓄膿症)が原因となることもあります。その他に精神的な原因も見逃せません。悩みやストレスがあったり,あまりに神経質であったりすると,やはり目が疲れるといった症状が起こってくるようです。このように,眼精神疲労には多くの原因があります。もちろん,原因はこれらの中のひとつとは限らず,多くのものが重なり合い,結果として眼精疲労を引き起こしているのです。また,多分に神経的なものが作用しています。天気の悪い日や気分のすぐれない日は,特に具合が悪くなったりします。常に気持ちを楽に,イライラしたり,くよくよ考え込んだりせず,長時間近くのものを見続けるときは,定期的に目を休めたり,規則正しい生活をし,睡眠を十分とるなど,自ら治そうとする姿勢が大切だと考えます。

 

          

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