《 目の構造と働き 》
< 目の構造 >
目の発生,つまり視覚器官のはじまりは,生物がこの地球上にあらわれはじめてから始まったといえます。目のない小さな生物(単細胞生物)でさえ光と暗やみがわかります。また,ミミズでは,目とよばれるものはありませんが,皮ふにたくさんの光を感じる細胞(光感覚細胞)を持っていて,明るさのわずかな変化をうまくとらえています。人間の目は,このような感覚細胞の進化の結果といえるでしょう。現在の人間の目は,脳のこつの断片が,残りの部分から分かれ,だんだん目に変わっていったものです。つまり,人間の目は,外にとび出した脳といってもよいでしょう。 |
目のしくみとカメラ
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カメラ → 目 ボディー → 強膜(しろ目) フィルター → 角膜(くろ目) レンズ → 水晶体 しぼり → 虹彩(こうさい) フィルム → 網膜(もうまく) 最近のカメラでは,ピントを合わさずに簡単に写せるようになっています。これは,しぼりが光の強さによって自動的に大きくなったり小さくなったりして光の調節をしながら,フィルムに適当な明るさで像をむすんでいるためです。このように,目とカメラは,つくりそのものがよく似ています。 しかし,最近では自動シポリの写真機もできていますが,一般にカメラでは,レンズの光の屈折カが変わらないため,像をフィルム上にむすばせるためにはレンズを前後に動かさねばなりません(焦点距離を変えることで焦点を合わす)。 目では,レンズの働きをする水晶体が光の屈折力を変えて網膜の上で像をむすばせます。 また,フィルムは光のエネルギーを物理的なまま残しますが,網膜では,視細胞から受けとった情報を意味のある「画面」にして脳に送り,脳ではじめて「現像」して「見る」という道すじをとることになります。 |
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赤ちゃん 3歳 おとな |
生まれたときの赤ちゃんでは直径16.5〜17mmしかありませんが,3歳で22.5mm,その後14歳までに毎年0.1mmずつ成長して,おとなで23〜24mmになるといわれています。眼球の形はピンポン玉のような形です。大きさはピンポン玉より少し小さく,10円玉(23mm)より少し大きいくらいです。他の動物では,ウサギが人間の眼球とはぼ同じ大きさで,ウシ,ブタは人間より大きくなります。 |
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おとなで約7.4gです。容積は6.5ccくらいあります。 |
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今までにつかまえられたものの中で最大の目を持つ生きものは,ダイオウイカで,直径50cm,身体17mというものがあります。人間にあてはめると,目の大きさは17cmにもなります。 深い海のなかにすむ動物では,光がなかなかとどかないので,目は退化しているか,大きくなっているかのどちらかです。ある種のイカには,左目が右目の4倍もあり,浅い所では小さい方の,深い所では大きい方の目を使って見ているといわれています。 |
1.瞼結膜 2.円蓋部結膜 3.球結膜 痛覚 冷覚 |
結膜という言葉は,眼球とまぶた(限瞼)をむすぶ組織という意味で,まぶたの内面と強膜(しろ目)の前面をおおっているうすい透明な膜です。 そして,次の三つに分けられています。 (1)瞼結膜(けんけつまく) まぶたの裏をおおう部分で,まぶたとしっかりくっついています。 (2)円蓋部結膜(えんがいぶけつまく) 瞼結膜から球結膜へと移る間の部分で,広いポケットをつくっています。そして,眼球とまぶたの運動をしやすくしています。 (3)球結膜(きゅうけつまく) これは白目に当たるところで,強膜の上をおおい,角膜(くろ目)との境で,強膜と強くむすびついています。そして,多くのしわをつくって眼球の運動を円滑にできるようにしています。 結膜の知覚は,角膜と同じで,痛覚と冷覚だけしかありません。(三叉神経の第1枝と第2枝によって支配されているため)。 結膜炎は,主として瞼結膜,円蓋部結膜にみとめられ,球結膜の充血は結膜炎の症状が強い場合他にみられます。 |
目はやわらかい 前は水のようなもの後ろはたまごの黄身のようなものでできています |
角膜とは,眼球の最も外側の部分の透明な膜で,よこ11mm,たて10mm,厚みは0.7mmあり,「くろ目」にあたるところです。これに連なっていわゆる「しろ目」の強膜があります。
役目としては,限球の形を保ち,外の光を通して光を屈折させ,ひとみの中に光を送り込みます。つまりレンズの働きをするのです。 光の屈折力は,角膜と前房で眼球全体の屈折力の2/3にあたります。 角膜の特徴としては, (1)血管のない組織(無血管組織)で,周囲の血管網と前房水と涙によって栄養をとっています。また酸素は,ほとんど大気中からとっていますが,涙液からもとっています。 (2)痛覚,冷覚には非常にするどく,また痛覚は角膜中央部のほうが周辺部より敏感です。温覚についてはあるかどうかはっきりしていません。 (3)温度は表面をうるおす涙の蒸発のため体温より少し低いのが普通です。 (4)形としては,ラグビーボールのような楕円形と考えてよいでしょう。 |
強膜
1紅彩 2強膜 3脈絡膜 4網膜 |
強膜とは,眼球の外側をつくるいわゆる「しろ目」であり,乳白色の強くて囲い膜で,前方は角膜とつながっています。 その下には脈絡膜という黒褐色の膜があります。 構造的には腱に近く,血管が少なくてほとんど光を通さないため,眼球内へ不必要な光が入るのを防ぎ,眼球の内部を保妄害し,眼球の形を保っています。 この強膜は比較的病気の少ないところですが,外傷などで破裂したりすると,眼球の内容物が出てしまい,視力に重大な影響をおよぼすことになります。 |
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強膜は部位によって厚さが違います。最も厚いところは,視神経が強膜をつらぬく眼球後壁で約1.0mm〜1.5mm。最もうすいところは直筋の附着部で約0.25〜0.3mmほどです。なお,強膜の表面(表層)を上強膜といいます。 |
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強膜は幼年期には膜がうすく,内側のブドウ膜がすけて見えるので,白目のところがやや青く見えます。 老人になると,繊維が硬くなり脂肪も付くのでやや黄色がかって少しにごってきます。 |
ブドウ膜
1虹彩 2毛様体 3脈絡膜 |
ブドウ膜とは,強膜と網膜の中間にあり,血管や色素に富んだ膜で,虹彩,毛様体,脈絡膜の三つをまとめてよんだものです。 (1)虹彩 一 角膜を透して見える,日本人ではこげ茶色の部分で,瞳孔から入る光の量を調節しています。 (2)毛様体 一 虹彩を固定する役目とチン氏帯を介して水晶体を支え,水晶体の厚さを変える働きをしています。また房水産生にもかかわっています。 (3)脈絡膜 一 内側の網膜と外側の強膜によってはさまれたうすい膜で,多量の色素があり,眼球内を暗くしています。つまり,カメラの暗箱の役目をしているわけです。また,血管も多く,血管のない網膜外層に栄養を補給しています。 |