近視 

近視

はるか遠くを見るとき,つまり眼が全く調節していないとき(無調節状態)に,平行光線が網膜より前に像をむすぶものをいいます。
近視は軸性近視と屈折性近視に分けられます。

     

軸性近視

軸性近視とは,目の屈折力はほぼ正常で,眼軸が普通より長い場合をいいます。普通,眼軸が1mm長ければ屈折力は約3Dふえるといわれています。

     

屈折性近視

屈折性近視とは,角膜や水晶体の屈折力が強すぎる場合をいいます。

     

近視度の分類

近視度の分類は4段階に分けられています。

(1)弱度近視  → −3D未満

(2)中等度近視 → −3D〜−6D未満

(3)強度近視  → −6D〜−10D未満

(4)最強度近視 → −10D以上

注)−(マイナス)とは近視の度数(ディオプター)を表す。遠視のときは+(プラス)となる。

 

臨床的分類

(単純近視

病的近視

進行性近視)

そのほか,臨床的分類として,単純近視と病的近視に分けられます。

単純近視は,環境の影響がかなり強いといわれています。大体25歳くらいで進行はとまります。学校近視(停止性近視)とよばれているのはこの近視です。

病的近視とは,何らかの視機能の障害をもっており,先天性の軸性近視の−8Dをこえる近視の90%がそうです。そのほか,進行性近視(悪性近視)とよばれるものがあります。これは,幼児に発生して進行も早く,高度の近視になるものをいいます。

 

Q.近視の原因は何ですか

近視の原因としては,個体によって起こる内因的なものと,環境などの外因的なものが視雑に入り組み合って起こると考えられていますがいまだ定説はありません。

 主な説としては,

(1)屈折説

目を近づけていろいろなことをする(近業作業)ために,この状態に便利なように毛様体筋が動き,はじめは緊張していたものが,徐々にその状態があたり前のこと(器質化)になって、近視になってしまう説。

(2)眼軸説

眼軸が少しずつ長くなって,正視→軽い近視→中程度の近視という順になっていく説。

 があります。その他,偏食や体質が弱いことによって起こるという説,砂糖をとりすぎると起こるという説,頭部が充血するような姿勢で目を酷使すると首の動脈が圧迫されて起こるという説,ストレス説その他いろいろあります。

>>> (※参考) 近視の進行防止と治療について

 

Q.仮性近視(調節過緊張症または偽近視)とは

眼科では仮性近視ではなく,偽近視という言葉を使います。この偽近視については,その存在そのものを否定する眼科医もいます。近視の前の段階が偽近視ということではありません。つまり,近視でもないのに視力が低下し,近視のメガネをかけると視力がよくなる場合をいいます。偽近視かどうかを調べるためには,散瞳薬を点眼して無調節状態にした後,検影法やレフラクトメーターによる屈折検査を行ないます。この際,明らかに屈折異常の値がでれば偽近視ではなく真性近視なわけです。

>>> (※参考) 近視の進行防止と治療について

 

Q.偽近視の治療はどうするのですか

偽近視と診断された場合,眼科医は点眼療法や内服療法を行ないます。点眼療法としては,夜寝る前に1回だけ点眼するミドリンM,1日3〜5回点眼するミオピンがあります。このほか,0.5%ピロカルピン点眼薬,ビタミン剤があります。また,治療を受けていても,目を疲れさせないような生活を続けなければなりません(視力の管理参照)。

本来の意味での偽近視ではない場合は,この治療法を行なっても効果を期待できないのが実情です。1〜2カ月治療を続けても視力の改善がみられなければ,やはり適当なメガネを用いるべきです。

>>> (※参考) 近視の進行防止と治療について

 

Q.近視が治る手術はありますか

 

近視の手術にはいくつかの方法があります。過去には、合併症を併発してかえって悪くなったり、失明したりした例も多かったので、眼科医の間では慎重な意見が多かったのですが、新しい術式の出現とその改良とともに徐々に見直されつつあります。

近年は、RK手術(radial keratotomy)1971〜、エキシマレーザーによるPRK(photorefractive keratectomy)1988〜、LASIK(laser in-situ keratomileusis)1995〜、ICR(intra corneal ring)、Phakic IOL(眼内コンタクトレンズ)などがおこなわれるようになってきました。

最新のLASIK(レーシック)では手術時の合併症も少なくなり、術後の成績も非常によいことから、急速に普及しつつあります。

ただし、「成長に伴い度数がかわっていく学童期〜青年期には手術をするべきではない」というのが手術を積極的にすすめる立場の医師達にも共通した意見です。

>>> (※参考) 近視の進行防止と治療について

 

Q.視力回復センターというのはどんなところですか。また近視が治るのですか

 

近視または偽近視の人が視力回復センターで行なっている遠望視練習法,水晶体体操法,目の健康体操によって治るということについては,医師によって考え方が異なります。

近視が眼軸の長さの異常によって起こる説(眼軸説)をとる医師の場合,このようなトレーニングは無駄だというでしょうし,水晶体の屈折異常によって起こる説(屈折説)をとる医師の場合は悪いとはいわないかもしれません。「調節緊張での一時的な近視化」や「一時的な調節力低下による視力改善」に対しての効果は一部で認められているものの、大多数の眼科医がその効果については懐疑的です。

全ての視力回復センターを否定するわけではありませんが、一部に「近視が治る。視力がよくなる」と派手な広告で顧客を集め、ニセの体験談などでさも効果があるように宣伝して、高額な料金をとる悪質な業者が問題になったケースもあります。

視力低下イコール屈折異常とは限りません。他にも視力を低下させる疾患が数多くあるからです。もし、視力回復センターへいく場合は、眼科専門医の診察を受けて相談してから行くべきでしょう。

(本項目の内容は原本から一部改定しています。)

>>> (※参考) 近視の進行防止と治療について

Q.中国式目の体操を教えてください

近視の予防と治療に中国式目の体操が以前から行なわれています。
目の疲れをとったり、一時的な近視化を緩和させる効能があるとされています。

>>> (※参考) 中国式 目の体操

 

Q.針で近視治療が出来るそうですが

また,近年東洋医学の針療法により近視の治療が行なわれているところがありますが,確実に信頼できるものではないと思います。1980年の国際眼科学会で針治療についての論文発表がありましたので,私は演者の医師と会い,方法を教えてもらいました。また,治療現場を見学のために中国へも行ったことがありますが,診療室の視力標の照度はずい分暗く,非常に古ぼけて紙の変質したスネレンの視力表で測定していました。効果判定を下すというよりも,裸眼視力と単なる矯正視力のみで視力が「よくなった・悪くなった」と説明しているようでした。しばらくの間,私自身もこの方法(この医師が開発した針で,針を球後にうつと同時に,他のつぼにうつ)を数百例試してみましたが,効果が期待できない症例がほとんどでした。

ただし,針療法は経験的に,神経性眼精疲労や上眼窩神経痛の一部には目の疲労を消失させたり痛みを一時的になくすのに確かに効果があると思います。

 

Q.ヨガで近視治療ができますか

そのほか,いろいろな近視治療法がありますが,そのほとんどが経験的な発表であって学術的な裏付けが確立されている方法はごくわずかです。

ヨガにしても,私は経験したことがないので断言はできませんが,やはり医学的常識からいえば,学術的根拠がうすく簡単に近視が治るとは思えません。

 

Q.近視の予防法を教えてください

近視には,はっきりした予防法はないといってもよいでしょう。だからといってそのまま放置しないで次のようなことを守って,近視にならないように努力する以外に方法はありません。

(1)すききらい(偏食)はせず,十分に食事をとる。

(2)戸外の日光の下で適度な運動をする。

(3)長時間,続けて読書など目に近いところでの作業をしない。なお,読書は本と目の間を30cmほどはなす。

(3)文字が小さすぎたり,にじんだり,テカテカする紙質に書かれた活字を読まないようにする。なお光は直射日光をさける。

(4)読書,勉強などのときは,よい姿勢をとる。

(5)鉛筆はHBかBを使う。

(6)おはし,鉛筆の持ち方に注意する。

(7)規則正しい生活をする。

(8)いすに座ったとき,机の高さがひじの高さになるように調節する。いすの高さは,座ったときひざが90度になるように調節する。

(9)黒板の字が見える場所に席を変えてもらう。

(10)目をほそめて見ない。

 

(1)すききらいをしない

(2)戸外で運動する

(3)直射日光はさける 長時間続けて読書など目に近いところで作業をしない

(4)読書、勉強のときは良い姿勢をとる(高さはざぶとんで調節する)

(5)鉛筆はHBかBを使う(6)おはし、鉛筆の持ち方に注意する

(7)規則正しい生活をする(8)机、いすを調節する

(9)黒板の字が見えるところに席を変えてもらう

 

>>> (※参考) 近視の進行防止と治療について

 

Q.視力低下の早期発見方法を教えてください(1)

見えにくい,という不自由さが出てこない限り・視力低下はなかなかわからないもので,やはり最低3カ月に一度は自分で検査をしておくべきでしょう。

ただ,次のような症状があれば,できるだけ早く眼科専門医で検査を受けてください。

(1)学校検診で視力低下を気付いたとき,指摘されたとき。

(2)春の学校検診で異常がなくても,秋の検診で視力低下を起こしたとき。

(3)目を細めて見るとよく見える。

(4)左右の目の見え方が違ってきた。

(5)雨の日や曇った日に,黒板の字が少し見えにくくなった。

(6)後ろにすわると黒板の文字などが見えにくい。

(7)人のメガネを借りてみるとよく見える。

(1)学校検診で (2)秋の検診で

(3)目を細めるとよく見える 

(4)左右の見え方が違ってきた

(5)雨の日や曇った日に見えにくい

(6)後ろに行くと見えにくい

(7)人のメガネを借りるとよく見える

Q.視力低下の早期発見方法を教えてください(2)

5歳以下の子どもの場合では,次のような症状があれば視力が低下している可能性があります。できるだけ早く眼科専門医で検査を受けてください。

(1)目を細める,目つきが悪い。

(2)斜視がありそうだ,斜位がありそうだ。

(3)テレビや物に近づいて見る。

(4)見えにくいような様子をする。

(5)兄弟,姉妹も視力が悪い。

(6)よく転ぶ。

(7)本を読んだり,絵を描いたりするのに根気がなく,あきっぼい。

(8)集中力がない。

(9)近くのものを長い間見ていると疲れやすい。

 

(1)目を細める (2)斜視、斜位がありそうだ 

(3)テレビに近づく (4)見えにくそう

(5)兄弟、姉妹も視力が悪い (6)よく転ぶ  

(7)根気がない   (8)集中力がない

(9)近くを見ると疲れやすい

 

Q.学校生活上での必要な視力はどれくらいですか

学校の黒板の文字がはっきり見える視力を,文字の大きさと座席の場所で示したものが下表になります。この表よりわかるように,少なくとも矯正視力を含めて0.3以上でないと黒板の文字をはっきりと見ることができません。また,近業の場合でも30cmはなれた文字を読むことさえ困難になります。教室で,比較的うすく書いた文字をはっきり読むことができる視力は0.7以上であることがわかるでしょう。

教室で、比較的うすく書いた黒板の文字を、はっきり読むことができる視力(丸尾)

前列   中列   後列

0.2
0.3
0.5
0.7
0.9
1.2
不可
不可
不可
不可
不可
不可
注)大中小は文字の大きさ 
 

Q.近視によって起こる病気はどのようなものがありますか

近視のなかの強度近視や最強度近視では,眼球が後方に長くなるため,網膜や脈絡膜が引き伸ばされ,目の奥にいろいろな変化や症状がでます。網膜の黄斑部に出血を起こしたり,硝子体が融解または混濁を起こしたり,網膜剥離を起こしたり,白内障や外斜視を起こす場合もあります。ただし,これは軽度近視では起こりません。

 >>> (※参考) 近視の進行防止と治療について 

           

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