<色覚>

   

Q.色覚とは

色覚は網膜の視細胞のうち,中心部に多くある錐体細胞の働きで,光の波長を感じとり,それを大脳に伝えて色を感じます。

 

Q.なぜ色をかんじるのですか

色を感じる三大学説

(1)ヤング・ヘルムホルツの三大要素説

網膜の錐体細胞には,赤・緑・黄(または青)を感じる3種の要素があって,これらがすべて興奮すると白になり,まったく興奮しなければ黒になり,三つの要素がいろいろな割合で適当に興奮することで,すべての色を作り感じることができるという説。つまり,三つの原色の絵具ですべての色を作ることができるのと同じ原理です。

(2)ヘーリング反対色説

白と黒,赤と緑,黄と青の三つの物質があると仮定して,それらの物質が分解したり合成(同化)されるときに,白,赤,黄,黒,緑,青の色を感じることができるという説。

(3)ラッド・フランクリンの発達説

長波に属する黄の感覚をおこす物質と,短波の青の感覚を分化していくと,長波長,短波長の両側の波長の光をおこす物質が次々とできてくるという説。なお,人間の目は,最高の条件(*)のもとで100万種類の色を識別することができるといわれています。たとえば,最も精度の高い光電式分光光度計でも,人間の目に比べると40%の精度しかありませんから,いかに人間の目が素晴しいかわかるでしょう。

*最高の条件とは次の三つが整っていることをいう。

(1) 両目を使う

(2) 明るい照明のもと

(3) 広い面積の色を比較する

 

Q.光覚とは?

光覚とは光を感じその強さを区別する感覚のことで,色調,明度,彩度の三つの要素を持っています。明るいところでは,網膜の視細胞中の錐体細胞(約700万)が,暗所では桿体細胞(1億5000万)が光エネルギーを電気エネルギーに変えて脳に伝えることで光覚を感じることができます。

 ○色調 → スペクトル中の各単色光に特有な色

 ○明度 → 色の明るさ

 ○彩度 → 白がどの程度交わっているかによって決まる要素

また,同じ色でも明るさが異なると目立つ度合が違います。つまり,明るいところでは黄色と緑がもっとも明るく見え,たそがれ時には,青色と緑色の部分がもっとも明るく見えます。このようなことをプルキンエ現象といいます。

 

色覚異常(色盲)

全部の色,または一部の色を識別できない異常を一般に色覚異常といい,先天性と後天性に分けられますが,先天的なものがほとんどです。

部分色覚異常

赤緑色覚異常(第1,第2色覚異常)

色覚異常のうちで一番多いもので,日本では男子の約5%,女子は0.3%程度。

赤色覚異常・・・・赤と青緑が無色に見える

緑色覚異常・・・・緑と赤紫が無色に見える

青黄色覚異常(第3色覚異常)

赤と緑は感じるが,青や黄を感じない。正常な人には黄に見えるものが灰色に,青緑から紫にかけての色が緑や青緑に感じる。非常にまれである。

色弱

一般に色覚異常の程度の軽いものをいうがその区分ははっきりしない。健常者と同じく色調を感じるが,その能力が低いため似た色調の区別が困難な場合をいう。

 

全色覚異常

(桿体1色型色覚)

10万人〜20万人に一人ときわめてめずらしいもので,錐体の機能が欠け,桿体の機能だけが存在するものと考えられ,多くは弱視を伴い,視力は通常0.1以下である。

 

Q.色覚異常は遺伝するのですか

赤緑異常は伴性劣性遺伝といって,普通女性には少なく,母親を介して男子に多く色覚異常がでます。

 

Q.色覚検査とはどんなものですか

色覚検査の種類

学校などで多く使われているのが石原式とよばれるもので,同じ色の濃淡を数字や文字にして,正常者は読めても異常者は読めないか間違って読む,または,正常者は読めないが異常者は読めるものにしています。なお,この石原式では色覚異常の程度を知ることができないため,その欠点を補うものとして石原・大熊式,東京医大式他があります。これらを仮性同色表といいます。正しい色覚異常を検出するためには,アノマロスコープによる診断が一番大切です。アノマロスコープは,色覚異常の種類や程度まで調べることができ,のぞき窓から見ると,上下に二分された円形視野があり,上半に赤と緑の単色光がまじり,調節によってその配合の割合を変えることができます。また,下半分は黄色光で,その明るさを変えることができます。そのほかの方法として,

ランタン・テスト・・・・赤,緑,黄の三種類の色光を見て,その色明を答えさせます。

パネルD−15テスト・・・・15色のバラバラのキャップを,基準色にもっともよく似ている順に正しく並べるテストです。

 この二つを組み合わせることにより,かなりの色覚異常を判定することができます。

 なお,学校検診で色覚異常が検出されれば,連絡簿や眼科の精密検査依頼用紙に,必ず使用した検査表か検査器具を書いておくことが必要と思います。仮性同色表を使用することは集団検診として手軽に短時間で検査ができますが,その結果をすぐに判断してしまう危険性があります。必ずそれ以上の精密な検査を受けるように指導することが大切です。最近ではあまり使用されませんが視野計で正常者と色覚異常の色覚分布を見ますと下図のようになります。正常者,異常者とも網膜の色覚範囲は白,黄青,赤,緑色の順に狭くなっています。

色覚異常(視野計で見た正常者と色覚異常者の色の分布)

赤緑色色覚異常者(左眼)          正常者(右眼) 

網膜の色覚範囲は、白・黄青・赤・緑色の順に狭くなる 

 

           

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