眼の外傷についてのQ&A

 

目の異物 

Q.目にはどんなゴミがよく入りますか

結膜によく入るのは,ホコリ,虫。角膜の場合は鉄粉異物(電車に乗っていてブレーキがかかるときに窓から顔を出していると,車輪のまさつによって生じる鉄粉が入る。その他工場などでハンマー・グラインダー等で飛入する)が最もよく知られています。

 

Q.目にゴミが入るとなぜ痛いのですか

目にゴミ(異物)が入った場合は,まぶたの裏の瞼結膜に入りこむか,角膜の上皮にひっついたり,刺さったりしていることがほとんどです。異物が角膜に傷をつけ,角膜上皮にある三叉神経が多く集まっている知覚神経の末端を刺激して鋭い痛みを感じます。異物の形や附着場所,角膜組織の侵入部位,深さによって痛みが違います。角膜の中央部から上方にかけての異物は,まばたきによって刺激されやすいため,下方にあるときより一時的に痛みは強くなります。2〜3日そのままにしておくと,角膜の周囲に炎症性の変化が現われ,球結膜の充血を起こしてきます。痛みもさらにはげしくなりますから,できるだけ早く専門医に診てもらいましょう。もっとも,角膜や結膜の表在性の異物はまばたきによって大部分は洗い出されてしまいます。

 

Q.目のゴミが入ってこすると,なかなかとれなくなるのはなぜですか

ゴミが入ったと感じたときは,痛いからといって目をこすらずに,静かにまばたきをするなどして,涙と一緒に流し出すようにしてください。こすってしまうと,主に裏側のまぶたに付着してしまうことが多く,なかなかとれなくなってしまいます。その理由は,上眼瞼内の瞼結膜に溝(瞼板下溝)があり,この溝に異物が入り込んでしまうからです。細く深い溝に物が落ちるとなかなかとれないのと同じ理由です。下まぶたの中にゴミが入ると,最初はコロコロしますがやがて痛みがなくなる場合があります。自然にゴミがとれるときもありますが,下まぶたの奥に入り込んでしまう場合もあります。モミをつけたお米が入ったまま,数カ月して芽が出てきた例もあります。学校検診などで下まぶた(結膜のう)にまつ毛が入っている子どもを見かけますが,多く入っている場合を除いては放置しておいても悪くはありません。

 

Q.目のゴミの取り方を教えてください

(1)角膜の表在性の異物のとき

あわてないで,静かにまばたきをして涙と一緒に流してしまう。それでもとれないときには,洗面器に水道水を満たして顔をつけまばたきをする。この方法は,急性結膜炎で目やにが出て,目が開けられないようなときの応急処置にも使えます。また,あまり異物が深くないときは,綿花やガーゼで軽くぬぐう方法もあります。

(2)まぶたの裏に異物が入っているとき

まぶたを裏がえし(反転)してゴミをさがす。ゴミが見つかれば,綿花やガーゼでそっとこすってとり出す。ゴミが見つからないときには,目をこすらずに専門医に診てもらうことです。診察のときは,どんなときに,どのようにしてゴミが入ったかをはっきりと説明できるようにしましょう。

 

Q.鉄粉異物は危ないと聞きましたが本当ですか

鉄粉異物が入ったままで放置しておくと,角膜が茶色に変色し,一日で角膜や球結膜の異物のまわりにサビの環ができてしまいます。このサビを十分にとらないと,痛みや刺激症状(球結膜充血)が続くことがあります。

 

Q.薬品が目に入ったときは眼科医ではどのような手当をしますか

薬物が目に入った場合,角膜障害の程度は,薬物の種類,濃度,PHや目の中に入っていった時間によって異なります。薬物の,酸やアルカリの濃度が高ければ高いほど危険です。眼科医は,症状,所見により,眼を十分に開眼して30分〜1時間,重度のアルカリ腐蝕では数時間以上,2リットル以上の生理食塩水,硝酸水,無菌蒸留水で十分に洗眼し,リトマス試験紙で結膜のうのPHが正常範囲に戻るまで処理を行ないます。もちろん,点眼や内服療法を行ないますが,場合によっては眼球の中の前房水を抜いたり,また,前房を洗浄します。さらに,角膜の周囲や結膜を切開したりはがしたりして血液の循環をよくし,角膜組織の壊死を防ぐ手術を行ないます。特に角膜が白く濁って,虹彩や瞳孔が見えない場合の予後は不良で,なかなか治らず,視力障害も著明です。

 

 

  

Q.石灰が目に入ると非常に危険であるといわれるのはなぜですか

石灰はアルカリ性の化学薬品です。眼に入った場合は,組織の浸透性が強く,特に角膜が腐蝕されて滞り,ひどい場合は,時間の経過とともに眼球内にも入り込んで炎症を起こして失明にいたることもあります。酸と違いアルカリは眼球内部へ入っていくため非常に危険だといわれています。

一救急処置一

石炭やアルカリ性液が目に入ったら,できるだけ早く,少なくとも15〜20分間は水道水(2リットル以上)で十分に洗うことです。なお,礪酸水や蒸留水があれば,多量に長時間ゆっくりと洗眼することがもっとも有効です。同時に,眼科医に連絡をとり,すぐに受診して眼の中にどのような薬品が入ったか(場合によりその薬品を持って行く)知らせることです。

 

Q.農薬が目に入ってとても痛んだことがあります。なぜですか

農薬の中で,特に除草剤などに含まれる有機リン剤では,けいれん等の神経症状を起こします。有機塩素剤,有機水銀剤,有機フッソ剤,ヒ素剤等では,神経症状の他,皮膚炎等を起こします。これらが目に入ると,角膜や結膜組織が酸化され,化学反応を起こして痛みとなります。

 

Q.催涙ガスはなぜ涙がでるのですか

催涙ガスはクロルアセトペンという成分を溶剤にとかし,さらにこれにフロンという薬剤を加えてスプレー化したものです。このクロルアセトペンの刺激によって,目の中の結膜がはれて涙がポロポロ出てくるわけです。もし,ガスが目に入ったら,なるべくよく洗い流すことです。

 

Q.雪目というのはどういうことですか

スキーや雪山登山などで,晴れた日にサングラスをかけていないと,太陽光の紫外線が雪を反射して目に入り,角膜に障害を起こしてきます。これを俗に「雪目」といいます。目の症状は,結膜が充血し,角膜はビマン性表層角膜炎を発症して目がひどく痛みます。

 

 

Q.電気溶接を見ていると目が痛くなるのはなぜですか

目を無防備にして熔接をすると,紫外線が目に入りその刺激で角膜上皮がはがれるために起こるものです。冷湿布をして角膜上皮の再生を待つしかありません。遮光メガネをかけていても起こり,熔接の火花を見つめることはしないでください。

 

Q.日食のときに太陽をじっと見ていると目が見えなくなるといいますが,本当ですか

皆既日食があるとき,ガラスにススをつけて太陽を見て観察しますが,もし何もしないでそのまま太陽を見ていると日蝕性網膜炎になり視力が落ちます。これは,レンズで太陽の光を集化すると黒い紙が燃えるように,目も凸レンズですから,眼底の物が一番よく見える黄斑部に光が集中し,黄斑部の視細胞を焼き切ってしまうために起こります。

 

 

Q.原爆が落ちると,たとえ命が助かっても目が見えなくなってしまうというのは本当ですか

原爆が投下されると,まず多くの生物の生死に直接影響を与えます。たとえ死を逃れても,原爆自体の輻射エネルギーによって白内障をおこします。また,もし世界戦争で原爆や水爆がどんどん投下されることになれば,地球全体は厚い雲におおわれ太陽からのサンサンとかがやく光が届かなくなり生物は生きていないでしょうし,その反対に,有害な紫外線が地球をとりまき,紫外線等を少ししか通さないバン・アレン帯が破壊されるために多く地上に照射され,それが目に当たり瞼をあけていられなくなるでしょう。

 

Q.一酸化炭素中毒ではどのようになりますか

一酸化炭素は酸素の210倍もヘモグロビンと結合し組織に酸欠状態を起こします。全身的には,はじめは,頭痛,めまい,はき気,耳鳴等が生じてきて,次第に手足がしびれ,意識を失います。重症の場合,脳に後遺症を起こすといわれています。目についても,酸素不足を起こし,乾燥,痛み等を発症し,目をあけていられない状態になると予想されます。

 

Q.シンナー中毒は目にどのような影響を与えますか

シンナーは有機溶媒の中の,トルエン,キシレン,酢酸エチールなどを含んでいます。これらの薬品は目の角膜を刺激するだけでなく,目の中の神経の炎症を起こします。急性球後視神経炎という病気のため,視力が急にひどく低下したという例もあります。また,シンナー中毒は視神経だけではなく,呼吸器や循環器,脳の障害も起こします。その結果,意識はもうろうとなり,目はトロンとして,どこを見ているのか焦点が定まらず,視力の低下も起こします。非常に恐ろしい中毒です。

 

Q.交通事故のムチ打ち症によって目にはどのような症状が現れますか

症状としては多種多様ですが,主に眼精疲労様症状を訴えます。目が疲れる,近くが見にくい,物が二つに見える,目の奥が痛いなどで,その原因を調べると,調節異常や輻輳不全などがみられることがあります。またこれらの症状には心因性の要因が関係していることもあります。

 

Q.外傷のとき,片方のよい目まで悪くなるというのは本当ですか

本当です。片方の目に穿孔性外傷をこ受けた場合,特に虹彩毛様体の損傷がある場合は,反対の健康な目にフォークト・小柳病,原田氏病と同じ症状が現われることがあります。これを交感性眼炎といいます。外傷後1〜2カ月してから起こってくることが多く,高度な視力障害を残すこともあります。片眼を外傷で損傷し,他眼も交感性眼炎を起こしたとなると両眼の視力障害という最悪の事態をまねくことになります。外傷を受けた場合,外傷眼の治療はもちろんのこと交感性眼炎が起こるかどうか十分注意して見ておくことが大切です。昔は,外傷で交感性眼炎を起こす危険がある場合は,外傷眼を摘出してそれを予防していました。しかし,最近では,抗生物質,副腎皮質ホルモンなどの使用で交感性眼炎を起こす割合は減ってきています。症状としては,流涙,羞明(まぶしさ),眼精疲労などからはじまり,充血,めまい,頭痛,嘔吐,耳鳴りなど全身症状も現われ,髪やまゆ毛が白くなり,皮ふに白斑が現われたりもします。視力も低下し,炎症部位によっては高度の視力障害を残します。現在でも,危険な場合は外傷眼を摘出し,健康眼を守ることがあります。まったく視力もなく,回復の可能性がないとしても,眼球を摘出してしまうことは患者さんにとっては大変な精神的苦痛を伴うものです。このような最悪の事態を避ける意味でも,防ぎ得る外傷に対する注意は怠らないようにしてください。子ども同士のふざけ合いから取り返しのつかないことになってしまった例もあります。

◎ 眼の穿孔性外傷を受けて,1週間〜2週間は,様子をみてもよいのですが,眼球積傷がいちじるしい場合は,眼球を取らなければならない場合もあります。ただし,手術後の顔ぼうの変化,視力が絶対回復しないことも考えた上でのこととなります。

2週間〜数年後→

 

         

前のページへ        次のページへ