近視 |
はるか遠くを見るとき,つまり眼が全く調節していないとき(無調節状態)に,平行光線が網膜より前に像をむすぶものをいいます。 |
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軸性近視とは,目の屈折力はほぼ正常で,眼軸が普通より長い場合をいいます。普通,眼軸が1mm長ければ屈折力は約3Dふえるといわれています。 |
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屈折性近視とは,角膜や水晶体の屈折力が強すぎる場合をいいます。 |
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近視度の分類は4段階に分けられています。 (1)弱度近視 → −3D未満 (2)中等度近視 → −3D〜−6D未満 (3)強度近視 → −6D〜−10D未満 (4)最強度近視 → −10D以上 注)−(マイナス)とは近視の度数(ディオプター)を表す。遠視のときは+(プラス)となる。 |
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(単純近視 病的近視 進行性近視) |
そのほか,臨床的分類として,単純近視と病的近視に分けられます。 単純近視は,環境の影響がかなり強いといわれています。大体25歳くらいで進行はとまります。学校近視(停止性近視)とよばれているのはこの近視です。 病的近視とは,何らかの視機能の障害をもっており,先天性の軸性近視の−8Dをこえる近視の90%がそうです。そのほか,進行性近視(悪性近視)とよばれるものがあります。これは,幼児に発生して進行も早く,高度の近視になるものをいいます。 |
また,近年東洋医学の針療法により近視の治療が行なわれているところがありますが,確実に信頼できるものではないと思います。1980年の国際眼科学会で針治療についての論文発表がありましたので,私は演者の医師と会い,方法を教えてもらいました。また,治療現場を見学のために中国へも行ったことがありますが,診療室の視力標の照度はずい分暗く,非常に古ぼけて紙の変質したスネレンの視力表で測定していました。効果判定を下すというよりも,裸眼視力と単なる矯正視力のみで視力が「よくなった・悪くなった」と説明しているようでした。しばらくの間,私自身もこの方法(この医師が開発した針で,針を球後にうつと同時に,他のつぼにうつ)を数百例試してみましたが,効果が期待できない症例がほとんどでした。 ただし,針療法は経験的に,神経性眼精疲労や上眼窩神経痛の一部には目の疲労を消失させたり痛みを一時的になくすのに確かに効果があると思います。 |
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そのほか,いろいろな近視治療法がありますが,そのほとんどが経験的な発表であって学術的な裏付けが確立されている方法はごくわずかです。 ヨガにしても,私は経験したことがないので断言はできませんが,やはり医学的常識からいえば,学術的根拠がうすく簡単に近視が治るとは思えません。 |
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近視には,はっきりした予防法はないといってもよいでしょう。だからといってそのまま放置しないで次のようなことを守って,近視にならないように努力する以外に方法はありません。 (1)すききらい(偏食)はせず,十分に食事をとる。 (2)戸外の日光の下で適度な運動をする。 (3)長時間,続けて読書など目に近いところでの作業をしない。なお,読書は本と目の間を30cmほどはなす。 (3)文字が小さすぎたり,にじんだり,テカテカする紙質に書かれた活字を読まないようにする。なお光は直射日光をさける。 (4)読書,勉強などのときは,よい姿勢をとる。 (5)鉛筆はHBかBを使う。 (6)おはし,鉛筆の持ち方に注意する。 (7)規則正しい生活をする。 (8)いすに座ったとき,机の高さがひじの高さになるように調節する。いすの高さは,座ったときひざが90度になるように調節する。 (9)黒板の字が見える場所に席を変えてもらう。 (10)目をほそめて見ない。 |
(1)すききらいをしない
(2)戸外で運動する
(3)直射日光はさける 長時間続けて読書など目に近いところで作業をしない
(4)読書、勉強のときは良い姿勢をとる(高さはざぶとんで調節する)
(5)鉛筆はHBかBを使う(6)おはし、鉛筆の持ち方に注意する
(7)規則正しい生活をする(8)机、いすを調節する
(9)黒板の字が見えるところに席を変えてもらう
見えにくい,という不自由さが出てこない限り・視力低下はなかなかわからないもので,やはり最低3カ月に一度は自分で検査をしておくべきでしょう。 ただ,次のような症状があれば,できるだけ早く眼科専門医で検査を受けてください。 (1)学校検診で視力低下を気付いたとき,指摘されたとき。 (2)春の学校検診で異常がなくても,秋の検診で視力低下を起こしたとき。 (3)目を細めて見るとよく見える。 (4)左右の目の見え方が違ってきた。 (5)雨の日や曇った日に,黒板の字が少し見えにくくなった。 (6)後ろにすわると黒板の文字などが見えにくい。 (7)人のメガネを借りてみるとよく見える。 |
(3)目を細めるとよく見える
(4)左右の見え方が違ってきた
(5)雨の日や曇った日に見えにくい
(6)後ろに行くと見えにくい
(7)人のメガネを借りるとよく見える
Q.視力低下の早期発見方法を教えてください(2) |
5歳以下の子どもの場合では,次のような症状があれば視力が低下している可能性があります。できるだけ早く眼科専門医で検査を受けてください。 (1)目を細める,目つきが悪い。 (2)斜視がありそうだ,斜位がありそうだ。 (3)テレビや物に近づいて見る。 (4)見えにくいような様子をする。 (5)兄弟,姉妹も視力が悪い。 (6)よく転ぶ。 (7)本を読んだり,絵を描いたりするのに根気がなく,あきっぼい。 (8)集中力がない。 (9)近くのものを長い間見ていると疲れやすい。 |
(1)目を細める (2)斜視、斜位がありそうだ |
(3)テレビに近づく (4)見えにくそう |
(5)兄弟、姉妹も視力が悪い (6)よく転ぶ |
(7)根気がない (8)集中力がない |
(9)近くを見ると疲れやすい |
学校の黒板の文字がはっきり見える視力を,文字の大きさと座席の場所で示したものが下表になります。この表よりわかるように,少なくとも矯正視力を含めて0.3以上でないと黒板の文字をはっきりと見ることができません。また,近業の場合でも30cmはなれた文字を読むことさえ困難になります。教室で,比較的うすく書いた文字をはっきり読むことができる視力は0.7以上であることがわかるでしょう。 |
教室で、比較的うすく書いた黒板の文字を、はっきり読むことができる視力(丸尾)
注)大中小は文字の大きさ
前列 中列 後列
0.2 0.3 0.5 0.7 0.9 1.2 不可 大 大 小 小 小 不可 不可 大 小 小 小 不可 不可 不可 中 中 小
近視のなかの強度近視や最強度近視では,眼球が後方に長くなるため,網膜や脈絡膜が引き伸ばされ,目の奥にいろいろな変化や症状がでます。網膜の黄斑部に出血を起こしたり,硝子体が融解または混濁を起こしたり,網膜剥離を起こしたり,白内障や外斜視を起こす場合もあります。ただし,これは軽度近視では起こりません。 |