治療,検査等の方法と用語

 

Q.主訴とは何ですか

 

 

わかりやすい言葉で、自覚症状の強く感じるものの順に

○主訴とは

いつもと違う,病気によって現われてきた身体症状の主なことをいいます。

主訴は一つであるとは限りません。眼科の場合ですと,見えにくい,目やに,目が赤い,コロコロする,まぶしいなど多くの訴えがあります。主訴に対し,その他の付随した症状を副訴,副副訴といいます。

○主訴を訴える場合

お医者さんのところで主訴を表現するときは,むずかしい言葉を使う必要はありません。かえって焦点がボケてしまうので,自分の感じる症状をそのまま表現することです。いくつもの主訴がある場合は,まず自分が一番因っていることから順に話します。

○また,話す場合,

 (1)その症状が,いつから,どのように,経過したのか

 (1)全身病,遺伝病,薬剤アレルギーはないかなどもあらかじめまとめておく必要があります。

そのほか,見すごしてしまう症状や自覚症状のない場合もありますが,重大な病気の前ぶれのこともありますので,日ごろの自分の体については,いつもチェックしておく心構えが大切です。

 

Q.既往歴とはどのようなことをいいますか

既往歴とは,生まれてからいままでにかかったことのある主な病気のことをいいます。日常しばしばみられる病気(カゼなど)は場合により話す必要はありません。

 眼科の関係からいうと,

 (1)全身的なもの  糖尿病,高血圧,腎臓病,肝臓病,心臓病,結核,リウマチ,喘息

 (2)頭頸部の疾患(交通事故)

 (3)出生状況  早期出産(未熟児),異常出産であったかどうか

 (4)アレルギーーアレルギー体質(ショック)があるか,薬剤アレルギー(薬品名がわかっていれば述べる)があるか。

これらは,今の病気を確定診断し,治療方針をたてるうえで,もっとも重要な手がかりとなります。

 

Q.現病歴とは何ですか

主訴がいつからどういう原因で起こり,どのような経過をたどって現在に至ったか,というものです。次のようにまとめて,適確に話せるようにしたいものです。

1)初発時の状況 2)前駆症(前兆のような症状)の有無 3)現在までの経過 4)合併症などの有無 5)これまでに受けた治療

また,その他カゼをひいている,耳鼻科にかかっているなど,患者さんの現在の全身状態も診断には欠かせない手がかりです。同時に現在薬を飲んでいるかどうかも大切です。どういう病気で,どんな薬をいつから服用しているか,はっきり述べてください。薬剤の重複や副作用などの点でとても重要なことです。また,女性の場合,病気ではありませんが妊娠しているかどうかも大切なことです。

 

Q.問診票とは

主訴,既往歴,現在の病気などを医師が患者さんにたずね診断の手がかりとすることを問診といいます。既に述べたように,これは診断,治療をするうえでとても大切なことですが,項目が多くかなり時間がかかり,聞き忘れをしてしまうこともなきにしもあらずです。そこで,問診を,患者さんが順番を待っている間にひととおり記入してもらうようにしたのが問診票です。私の医院では,下図のようなものを作り記入してもらっています。これを参考に,直接患者さんに問診をしていきますので,能率的,かつ効果的な役割をもっています。

   

Q.目薬は何滴くらいさしたらよいのですか

目の中に入る液量は約30cc(ul)といわれています。ところが,点眼薬の一滴は約50cc(ul)ありますから一滴さしただけでもかなりの量があふれ出てしまっているということです。つまり,一滴で充分だということです。それ以上さしても日の外にあふれ出るだけなのです。したがって1回の点眼の量よりも点眼の回数をふやすことにより薬剤の効果を高めることになりますから回数については医師の指示によく従ってください。

 

Q.古い目薬は使えませんか

点眼薬にも有効期間があります。種類によってかなりの差があり,2〜3週間のものから4〜5年のものまでまちまちです。また,冷所保存,室温保存,遮光しなければならないものなど保存方法も決められていますから,それによっても変わってきます。必ず医師の指示に従ってください。

 

Q.目薬にも副作用がありますか

薬ですから,多かれ少なかれ副作用は現われると考えてよいでしょう。点眼薬では,特に副腎皮質ホルモンがまれに緑内障を引きおこすことがあるので,長期にわたる使用には注意が必要です。特に角膜へルペスには注意して使用しなければなりません。その他,瞳孔を広げる散瞳剤や小さくする縮瞳剤には劇薬が多く,使用に際しては,他の点眼築でも同じですが,特に医師の指示通りに使用することが大切です。また,点眼薬によって過敏症状(かゆみ,充血など)が現われたらすぐに中止し,医師に報告してください。

 

Q.眼帯をする場合としない場合がありますがなぜですか

眼帯は目の治療,保譲,安静を保つためなどの目的があります。手術後に止血の目的で圧迫する場合,外部からの刺激を防ぐ場合,光をさえぎる場合,などに眼帯をします。医師に眼帯を指示されたら,勝手にはずすようなことはしないようにしてください。逆に,眼帯をしてはいけない場合というのがあります。それは,視力の発達段階にある幼小児などの場合です。この時期に,ある一定期間眼帯をすることは眼帯をした目に弱視を引きおこす危険性があるからです。眼帯ひとつでも,外見的なことではなく,治療という目的のために使用されているものですから,医師の指示に従うことが大切でしょう。なお,眼帯をして車の運転はしないようにしてください。

 

Q.眼底検査とはどのようにするのですか

眼底には視神経乳頭,網膜,脈絡膜の局所的な病変ばかりでなく,その動脈や静脈の状態から全身疾患に基づく異常がしばしばみられるため,非常に大切な検査です。検査方法は,ちょうどピンポン玉の内側を直径2mmくらいの小さな穴からのぞくのと同じことで,直像鏡という小さな器械を使うと,1.5倍に拡大された眼底がみられます。直接,瞳孔から目の奥をのぞき込む方法ですから簡単です。しかし,小さな穴(瞳孔)ですから,観察範囲が限定されるため,普通は散瞳剤を点眼し,瞳孔を大きくして検査します。そうすると,周辺部まで広い範囲がくわしく観察できます。また,このとき,眼底を写真にとることもできますし,腕の静脈に蛍光色素を注射して,これがおよそ9秒後に目の奥の網膜血管にきたとき,螢光撮影のフィルターをつけたカメラで30枚ほどの写真を連続して撮る螢光眼底撮影をすることもあります。腕の静脈に螢光色素を注射しますと,ちょうど夜光塗料みたいなもので,血管だけが写され,眼底の血液の流れを時間で追っていろいろな病気の状態を調べることができます。また,毛細血管の小さな拐傷や脈絡膜や網膜組識の透過性(漏出,にじみ出し)なども詳しく調べることができるのです。

 

Q.眼圧はどのようにして測るのですか

ゴールドマン眼圧計

通常,ゴールドマン眼圧計やシェッツ眼圧計というのを使用します。前者は最近よく使用されており坐ったままで測定しますが,後者は被検者をベッドにあお向けに寝かし,麻酔を点眼して,眼圧計を角膜の中央にのせて目盛りを読みます。このほかにも種々の眼圧計があり,麻酔を点眼せず,座ったままで測れるものもあります。簡単には指圧でだいたいのところを知ることもできます。(指圧法)が,正しい眼圧とはいえません。

シェッツ眼圧計

 

Q.目が出ているかどうかは,どのようにして調べるのですか

目が出ているという人の後ろに立って,頭の上から顔を見下ろすようにして,左右のまぶたの状態を比較すればよくわかります。正確には,ヘルテル眼球突出計という,一種の定規のようなものを使って測定します。日本人の正常の突出度はこれで測ると,10〜16mm(平均13mm)です。左右差は2mmくらいなら正常範囲です。3mm以上は病的と考えてよいでしょう。

 

Q.角膜の表面がでこぼこしているというのは,どのように調べるのですか

角膜の表面の状態で,不正乱視や正乱視などを調べます。これには,プラチード角膜計という,約20cm径の円板に白黒縞の同心円が描かれたものを角膜に映し,その映像を見て判断します。不正乱視の場合には,その映像が不規則にひずんでおり,正乱視ではだ円形に映ります。

 

Q.心身障害児への視力検査はどのようにするのですか

一般に視力検査は自覚的検査法で行なわれますから,応答できる能力が必要です。ですから,認識力の低い重症心身障害児の場合,視力を正確に測定することは困難です。しかし,障害児教育にとっても今ある能力を的確につかむことは何より重要であり,視力に関しても例外ではないでしょう。そこで,他覚的視力検査で視力を推定します。なお,これらの方法は,普通は乳幼児や詐盲の検査に用いられるものです。

(1) 視運動性眼振(OKN)

限前に縞模様をおき,これを水平方向に動かすと縞が見えている間は視運動性眼振(こきざみに眼球が左右に動く)が起こります。このときの縞模様の幅から視力を推定する方法。

(2) 視覚誘発電位測定(VEP) 

後頭部に電極をおき,眼に光刺激を与えたときの電位の大きさにより視力を推定する方法。

(3) PL法−PL視力検査器を用いての方法(P86)。

 

Q.視力検査でうそをいってもわかりますか

実際に視力が悪いのによくみせようとするうそは,すぐに見破れますが,よく見えていながら見えないふりをする場合は見破るのは困難です。これを詐盲といいます。たとえば,実際は0.1くらいの視力があるのにまったく見えないなどという場合です。これを見破るには,他覚的に器質性疾患がないことを確かめた上で視力のくわしい検査を進めていきます。前述の他覚的視力検査法もそのひとつです。また,視野検査,色覚検査なども併せて行ない詐盲かどうかを判断します。したがって十分な検査をすれば,最終的には見破ることができます。

 

Q.ERG,EOGとはどのような検査ですか

ERG(網膜電図)は,網膜に光刺激を与えたときに現われる網膜の活動電位をグラフとして記録したものです。これによって網膜の機能を調べることができます。網膜の変性疾患の診断や,白内障・角膜移植の術前に網膜機能の状態を推測し,手術の適応を決めるのにも役立つ検査です。EOG(眼球電図)は,角膜側にプラス,網膜側にマイナスの静止電位が存在していることを利用し,眼球運動を行なわせることによってそれを記録する方法です。元来,網膜色素上皮の機能検査として用いられていましたが,今日では眼球運動検査として広く用いられています。

 

Q.略語でよく使われるものを教えてください

眼科領域でよく使われる略語は次の通りです。

AHC

急性出血性結膜炎

AIDS 

後天性免疫不全症候群

BC 

コンタクトレンズの後面曲率半径(ベースカーブ)

FC

指数弁

CL

コンタクトレンズ

CT-SCan

コンピューター断層撮影法

Cyl(C)

円柱(レンズ)

D

ジオプトリー(レンズの度の単位)

E

正視

EKC

流行性角結膜炎

EOG

眼球電図 

ERG 

網膜電図

Gl.b.n.

矯正不能

HM

手動弁

IDU

抗ヘルペスウイルス剤

LS 

光覚

LV

左眼視力

n.c.

矯正不能

n.d.

指数弁

OKN

視運動性眼振

PCF

咽頭結膜熱

PD

瞳孔間距離

RV

右眼視力

SI

光覚

SPh(S)

球面(レンズ)

Tr

トラコーマ

VEP

視覚誘発電位

 

           

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