
生活スタイルの変化により60歳〜70歳代の方もさまざまな趣味をお持ちで大変お元気です。目から情報が多く入る現代社会においては、白内障手術後に視力回復だけでなく生活の質の高さの充実を図ることが目標となります。
白内障手術技術の進歩、レーザーによる屈折矯正手術・レーシックの登場により、近年白内障手術後にもより高い視機能の実現が可能となりました。その試みの一つが多焦点眼内レンズで2007年に厚生労働省の承認を得ました。


通常白内障手術の際に挿入する単焦点眼内レンズは、一点しか焦点が合わない為、例えば遠くに焦点が合っている場合には近用の老眼鏡が必要となり、近くに焦点が合っている場合は遠方用の眼鏡が必要となります。


多焦点眼内レンズはレンズの構造を工夫することにより、遠方〜中間距離〜近方に焦点を合わせることで、眼鏡の使用頻度を減らすことが期待できます。
レンズの特性上、複数の焦点が合うため単焦点レンズに比べると、暗所で光が散乱し、光の周辺に輪が架かって見える現象(グレア・ハロー現象)を自覚しやすくなりますが、手術後、数ヶ月のうちにほとんど気にならなくなる方が多いようです。


大きくわけて屈折型と回折型の2種類があります。

レンズ部分に同心円上に遠方用・近方用と異なる屈折力の部分が交互に繰り返される構造です。5焦点ゾーンを持つレンズとしてReZoom(AMO社)があります。レンズの直径は6mmで中心2.1mmのゾーンは遠方用、周辺に向かい近方用、遠方用、近方用、遠方用となります。それぞれのゾーンの移行部で中間視力を可能にします。日中瞳孔が収縮する高照度条件における遠方視力に優れ93%の方に遠方用眼鏡を必要としません(※1)。また中間距離へも光配分があり92%以上は中間距離の眼鏡も必要としません(※1)。ただ、中心2.1mmが遠方用のみですから近方視力は瞳孔径に依存します。明所より薄明かりにて近くが見えるレンズです。

同心円上に階段状の段差を持つ構造です。入射した光が回折現象により後方に波面を形成しますが、それぞれの段差を通じて生じた波面が干渉しあうところで焦点が合い像を結びます。TECNIS Multifocal(AMO社)が厚生労働省に申請中です。

回折型の構造を変化させたアポタイズ回折型としてReSTOR(アルコン社)があります。 レンズ直径6mm の中心3.6mmのみが遠近の回折領域で、周辺に向かい12段の階段構造が1.3μから端に向かい0.2μの高さへ除々に低くなるデザインです。3.6mmより周辺は遠用単焦点レンズとなっており、夜間など瞳孔径が大きくなる低照度条件における遠方視力を重視します。また瞳孔径が小さくなる近方視時には遠近のエネルギーバランスが等しくなり、93%の方に読書用眼鏡を必要としません(※2)。ただ中間距離に焦点が合わず多焦点レンズというより2峰性レンズという捉え方が的確です。瞳孔径にさほど依存しませんので、一般的に瞳孔が小さい高齢者に適しているといえそうです。


多焦点眼内レンズは、20歳代の目に戻るわけではありません。眼鏡使用頻度を少なく、眼鏡依存度を低くするものです。手術前にご自分のライフスタイルや希望する見え方を医師に伝え、十分な説明とご理解の上で手術をお受けください。またより良い視力の獲得のためには乱視矯正などの術後度数補正が必要となります。多焦点眼内レンズ手術の20〜30%に術後の術後度数補正(タッチアップ)が必要と言われています。当院では矯正精度の非常に高いエキシマレーザー屈折矯正手術でのタッチアップができる体制を整えています。

手術費用
片眼420,000円 両眼840,000円(税込)
タッチアップ費用(術後の追加矯正)
片眼105,000円 両眼210,000円(税込)
※術後3ヶ月間の治療費(検査・診察・お薬代)を含む
※1 Package Insert.ReZoomTM Acrylic Multifocal Posterior Chamber Intraocular Lens.
Advanced Medical Optics.Inc.
※2 ビッセン宮島弘子、林研、平容子:アクリソフ○R Apodized 回折型多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズ挿入成績の比較 あたらしい眼科24(8)2007