C-note開発秘話

電子カルテvs紙カルテの葛藤

従来の電子カルテは複雑なワークフローが苦手

SOAPの定型的な記載だけなら十分だったかもしれませんが、診療ワークフローが複雑な診療科では非常に使いにくいものになってしまいます。
問診→検査→診察→会計と常に一方通行なら使えなくもないですが、実際には受付・検査室・診察室・処置室・会計をいったりきたり・・・ カルテに挟んだり、貼り付けたりするものも多種多様。さまざまな帳票類もあるし、カルテ記載形式も百人百様。紙カルテでも同じ使い方をしている人はほとんどいないという多様性・・・ しかも忙しい診療の中で待ち時間を長くしないために短時間に記載を済ませないといけない・・・

必ずしも論理的ではないカルテ記載

医療従事者の思考過程そのものが経験則に基づくことが多く、論理的でない場合もあり、また医師の思考の過程を全てカルテに記載しているとは限らず、その結果のみ記載している場合もあります。
カルテは時系列にそって記載されていますが、その診断過程や治療過程がしばしば時系列にそって行われてない場合があり、記述が前後することがあります。

悲惨な?電子カルテ導入施設の実態

単なる「メモ付きレセコン」レベルでしかなかった従来の電子カルテでは、こういったカルテ記載の多様性に対応しきれず、「何かと不便で診療に倍以上時間がかかる」「紙をつかって、あとで電子カルテに入力」「紙カルテを残してオーダーリング(レセコン)として使用」といった哀れなケースもあとを絶ちませんでした。

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まずはペーパーレスにこだわらずにスタート

電子カルテをオーダーリングシステムとして活用

私自身、1999年の開業と同時に電子カルテ「POMシステム」を導入しました。当時はハードウエアのスペックも低く、ソフトウエアも未成熟で、試行錯誤の繰り返しでした。そして早くからこの分野に取り組んでわかったことは、必ずしも「電子カルテ=完全ペーパーレス」ではないということです。ペーパーレスにこだわりすぎると本来の「効率化」という目的から大きく逸脱してしまいがちですが、「紙記録」と「電子媒体記録」の双方のメリットを上手に活かすという選択肢もあります。

紙カルテはそのままで、処方やコストチェックを画面上でおこない、その内容をラベルプリンタに貼るというオーダーリングシステムとして使うことから始めました。

そういった点で、当時もっとも優れた素性を持っていたのが電子カルテAIクリニック。 数社の電子カルテを試用・導入したものの、いずれも納得できず、2004年にこのシステムを導入しました。

ラベルプリンタから出力・紙カルテにシール
このシステムで、従来のレセコンと比べて診療→会計までの待ち時間を大幅に短縮できました。

従来型レセコンの場合 オーダーリングの場合
医師が所見、処方・コストを一つ一つ
紙カルテに記載

医療事務スタッフがカルテ記載をみて
レセコンへ入力
(入力ミス誘発の可能性)

処方箋発行・会計
画面上で処方・コストのセットを選択し
瞬時にカルテ貼付シール、処方箋を出力
(所見は紙カルテ記載)




会計

今までは「医師のカルテ記載をみて医療事務がレセコン入力」していたわけですが、私の汚い字はスタッフに判読できなかったり誤読したりもありましたが、その悩みからは完全に解放されました。
セット機能で「病名」「処方」「コスト」をひとまとめにしたハンコをポンと一押し!といった感覚で操作できるので、定型的な診察ではその部分が正確で非常に迅速になりました。一人あたりの平均診療時間も1~2割短縮し、会計待ちもほとんどなく、導入前より外来終了が20~30分早くなりました。

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Claio導入

ピーエスシー相原社長との出会い

当院ではAIクリニック導入前より、S社の画像ファイリングシステムとT社の検査ファイリングシステムを導入していました。当時、これらのシステムでもレフやノンコン眼圧計の自動取り込み・時系列表示やグラフ化などは実現していましたが、その他の多様な検査を電子化してファイリングしたり、取り込んだデータを活用したりするためには、まだまだ技術的な課題や克服しないといけない問題点がいろいろとありました。

そんな中、当時に注目株であった山下軍司先生が提供するRS-Baseを試用しはじめていましたが、その懇親会でたまたまピーエスシー社の相原社長と隣同士に同席する機会がありました。

その会話の中で相原社長が私と同じS41年生まれであったことを知りましたが、会話が盛り上がり、私が温めていたアイデアを相原社長にぶつけてみたこところ、「できますよ~。半年もいただければ・・・」とあっさりとお返事。

今までにも眼科医療器機メーカーであるN社、T社、S社と開発アドバイスをしながら、いろいろと進めてきたけれど、数年たっても実現できていないレベルのことを「わずか半年で???」と正直そのときはほとんど信じていませんでした。

眼科検査ビューワー&ロールペーパーの開発

その後、同社の吉田さん、近藤さん、沖野さんら主要スタッフを交えて打合せを開始。Claio眼科用モジュールとして「検査ビューワー」「ロールペーパー」の開発が始まりました。 そして、わずか数ヶ月でプロトタイプが完成!

検査ビューワーで取り込み&縦覧 ロールペーパーで時系列表示&追記
<検査ビューワーで取り込み&縦覧・ロールペーパーで時系列表示&追記>

ピーエスシー社の素晴らしい技術力・開発力に驚嘆しました!!さすがにORCA(日医標準レセプト)の第一次開発メーカーとして、医療IT化が全国的にも最も先進的であることで知られる愛媛県を本拠地とし、その名声を支えていた中心的存在である実力をまざまざと見せつけられました。

画像ファイリングシステムの機能強化・周辺システムの拡充

高い技術力を背景に、ユーザーの要望を矢継ぎ早に実現してくれるので、ますます便利で高機能な製品に仕上がっていきました。

例えば

  • スリットテーブルに連動する撮影画面の自動ON・OFF
  • センサーによる左右眼の自動判別と画像情報登録
  • 手術動画ファイリング(AVIもしくはDivX)
  • HFA視野検査解析システム

など、例をあげればキリがありませんが、現在も進化を続けています。

眼科医療器機メーカーであるN社、T社、K社、S社などの製品と比較しても、使い勝手が非常によく、シェアを広げつつあるのは周知のごとくです。

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C-Noteの誕生

ペーパーレス化への障壁

電子カルテAIクリニックでの「紙カルテ+オーダーリング(シール出力)」は、診療の効率化という点では非常に優れた手段でしたが、「完全ペーパーレス」にすると、ワークフローが複雑な眼科では不便な点が増えて、効率が落ちるというジレンマがありました。

AIクリニックでさらなる進化を求めたかったところですが、開発元となるA社の社内事情が災いしてか、Ver.4の開発に関与したチーフの山崎君やHさんといった中心メンバーが退社してしまい、進化がストップしました。そして、Delphi+Oracleの開発環境ではどうしても超えられない限界も感じてきたこともあり、次なるステップをどうするか思案しはじめました。

バーチャル紙カルテ

そんな中、相原社長と近藤さんに以前からあたためていた「バーチャル紙カルテ」のコンセプトを提案しました。これは電子カルテのオーダーリング機能はそのままに、画面上の“バーチャルな紙カルテ”を使って「紙カルテ+オーダーリング(シール出力)」と同様の運用をすることで、今までの電子カルテの弱点を補おうとするアイデアです。

当時は分院となるレイ眼科クリニックの開院を間近に控えており、開発期間も短かったですが、なんとか開院に間に合いREMORA“VKKバージョン”としてデビューしました。

チーフ山崎君のピーエスシー入社と“バーチャル紙カルテ”の仕切り直し!

この間にA社を辞めたHさんがピーエスシーに入社。さらにチーフだった山崎君も、いったん他社へ就職していましたが、その後にピーエスシーのメンバーに加わりました。

REMORA“VKKバージョン”は、なかなかの出来映えでしたが、診療所向けのみの製品であったため、REMORAの派生バージョンではなく、病院電子カルテの部門システムのツールとしての要望もあり、それに対応すべく、Claioのカルテ記載インターフェイスとして新たに開発することになりました。そして、その製品は山崎君が中心的存在として担当することになりました。それが“C-Note”です。

C-note

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C-Noteプロトタイプ運用開始とブラッシュアップ

C-Noteのプロトタイプが完成し、まずは自院で電子カルテAIクリニックとの組み合わせで運用を開始しました。 もともと「紙カルテ+オーダーリング(シール出力)」で運用していたものを、「紙カルテの2号用紙がC-Noteにかわった」というスタンスで移行したため、大きな混乱もなく、比較的スムーズにペーパーレス化を進めることができました。

代診に来ていただく先生方にも「こんなに使いやすい電子カルテは初めて」「これだと紙カルテより便利で使いたいと思える」とお褒めの言葉をいただきました。

初期にはいくつかの細かな改良点が生じましたが、数ヶ月かけて少しずつ改良を重ね、自分の構想がほぼ具現化して、予想以上に快適に運用できるようになり、ようやく紙カルテの効率を超えるペーパーレス環境を構築できたと確信しました。

C-Noteプロトタイプ+REMORA

次におこなったのが、レイ眼科クリニックのREMORA(VKK)からC-Note+REMORAへの換装です。
機能的にはC-Note+REMORAがREMORA(VKK)の上位バージョンにあたるため、今後はREMORA(VKK)の入っている施設も、すべてC-Note+REMORAにリプレースされていくことになりますが、先行して試験運用することになりました。

お世話になっているピーエスシー社の方々(レイ眼科クリニックでの導入セットアップ中)
お世話になっているピーエスシー社の方々(レイ眼科クリニックでの導入セットアップ中)

そしてオール ピーエスシーのシステムへ

ちょうど新見眼科の方ではAIクリニックのリース期間も終了し、サーバーも7年目に入ったため、オーダーリングをAIクリニックからREMORA(ORCA)に乗り換えて、レイ眼科クリニックとまったく同じ構成にすることにしました。 これで当法人の3施設とも、すべてのシステムがピーエスシー社のものに置き換わることになります。

まずAIクリニックから、患者の頭書き(性別・生年月日・住所)、保険情報をORCAに移行しました。オーダー情報はそのまま移行できないため、再診患者のDo処方ができなくなった分だけ少し手間になった時期もありましたが、移行して3ヶ月も経過するとそれも少なくなり、今まで以上に楽になりました。

特にC-Note+REMORAの組み合わせではショートパス機能で「病名、処方、コスト、SOAPの定型文をセット」にしてC-Noteに送れるので、よくあるパターンの診療についてはカルテ記載がより効率化され、「紙カルテ+オーダーリング(シール出力)」よりも、さらに診察が早くなりました。

現在では午前中に一人で70~80名ぐらい診ても、ほぼ定時内に終われるようになっています。

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さらに進化したC-Note HD対応版

フルハイビジョンモニターサイズに最適化した画面表示

当初、C-NoteはSXGAサイズ(1280×1024)に最適化されていましたが、これから主流となるであろうFull HDモニター(1920×1080)に最適化して、リニューアルしたのが“C-Note HD対応版”です。

C-Note HD表示画面

カルテ参照では画面が広くなった分、患者住所・年齢・病名・受診履歴などの付帯情報が同一ウインドウ内に表示されるようになりました。タッチパネルモニタを使うと指でカルテをめくることもできます。

カルテ記載では過去カルテをみながら「新たに記入するカルテ画面」と「ツールボックス」が同時に開けるので、過去カルテを参照しながらの記載・新たな追記がさらに効率的になりました。

 

そしてC-Note HD対応版 Ver1.0 正式リリースへ

現在までに複数の施設にC-Noteが導入されていますが、それらの初期バージョンから細かいところで使い勝手が改良されてきています。平成23年9月にリリースされた最新バージョンをもって、プロトタイプから、”C-Note HD対応版 Ver1.0“として、第63回日本臨床眼科学会で正式デビューです。

第34回日本眼科手術学会のピーエスシー社ブースにて
第34回日本眼科手術学会のピーエスシー社ブースにて
(左からC-Note開発チーフ山崎氏・私・取締役システム開発部長近藤氏

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